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●◎短編小説・曝し場◎●
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「カニバリズム」というお題で書かされたもの1/8
:2005/03/12(土) 23:09:24
桜の木の下で 〜人肉食の基礎知識〜
後で、その場にいた人間全員に、「お前の責任だ! お前があんな話題出したから変なのが出てきたんだ!」と袋叩きにされたのだが、あの時ノリノリでその話に参加し、かつ彼を大歓迎していた人たちに私を非難する権利はないと思う。
とにかくあれはぽかぽかといい天気の日のことだった。どれくらいいい天気かと言えばかといえば屋内をこよなく愛する文芸部+漫研+歴史部の面々が気の迷いで思わず大学の隣の公園まで花見に出かけてしまうくらいだった。
柔らかな草の上のそこここに、シートをしいて談笑したり食事している親子連れやらカップルやらが見える。幸いよく通る道の横にある、ひときわ立派な木の下を陣取ることができた。
緩やかに舞う花弁の下には澄んだ酒で満たされた杯、お重に詰められたご馳走。
……ではなくコンビニで買ってきた発泡酒にしょぼいつまみが散らばっていただけなのだが、ビニールシートの上の簡易宴会に思いがけない客を迎えて、そのとき座は大いに盛り上がっていた。
「話戻せ話戻せ、どっから始まったっけ?」
「たしか部長が衝撃の説を言ったでしょ、その前が一番有名なのは遭難だけど厳密に言えば含まれないって話で……」
「それだ! 確かそれだ! あーお待たせしてすいません、今話を見つけられました!」
昼から飲んだくれて騒がしい大学生たちと、そのなかでちょこんと正座しているおじいさん。はたから見れば奇妙な組み合わせだが、少なくとも大学生のほうは非常に喜んでおじいさんの要望に応えようとしていた。
いまどき珍しい、和服を普段着として着こなせているおじいさんはシートの上で正座して恐縮したように頭を下げた。
「すみませんねえ、お邪魔させていただきまして」
たまたま正面に座っていた私もあわてて頭を下げた。
「あ、いえ、こんな話ができる人なんてすごく貴重ですから……」
だが、正直なところ私はこのおじいさんをこんなところに招き入れるのにやや抵抗があった。
学術的な興味で(別に私たちが学術的で高尚な話をしていたというわけではないが)今まで私たちがしていた話を聞きたいという人ならともかく、そうでないとしたらこの人結構危険な人ではないだろうか。
いや、こんな穏やかそうで品のいいおじいさんだし、でも見掛けで人を判断してはいけないというし、ていうか五分前まで見も知らぬ人を上げるってどうなのかな、今世の中物騒だしいきなり変なことはじめたらどうしよう。ホントにお前たちを食ってやるー! とか……。
しかし私の考えはやたらいい笑顔の漫研パンク少女と仲間にこだわる文芸部員と周りの状況を考えず思ったことをそのまま口に出す歴史研部員が身を乗り出してきたことによって中断された。
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