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●◎短編小説・曝し場◎●

288実験2/2:2005/01/09(日) 14:38
 死にかけた敵に止めを刺す作業を、大尉は部下にやらせようとはしなかった。自ら、私物のナイフをもって、エルフの喉を裂いてまわった。
 戦闘にはほとんど時間はかからなかった。
 軍曹は、先頭を進むエルフが事前に目をつけていた大木の横を通ったところで、銃を放った。銃弾は正確にエルフの頭の半分を吹き飛ばし、それが街道沿いに隠れていた兵達への戦闘開始の合図となった。エルフ側は完全に奇襲を受けた格好で、森の中からの銃弾に、半数が成すすべもなく打ち倒された。エルフ側が混乱した隙をついて、大尉たちは突撃をかけた。
 戦闘終了後、自分の足で地に立っているエルフはいなかった。その全てが死ぬか、ほとんど死にかけていた。それに対して大尉たち人間側の死者は一名、突撃の際、大尉の右手を駆けていた兵士が、魔法でマッチ棒のように炎上しただけだった。
 大尉が血なまぐさい仕事を機械的にこなしていると、まだ子供のような顔をしたエルフが一人、喉を裂かれる際に何かを言った。
「なんと言った?」
ナイフを死体の衣服で拭った後に、大尉はエルフ語のわかる少尉にそのことを尋ねた。
「はい。いやだ、死にたくないよ、です。大尉」
「そうか」
大尉はほんの一瞬だけ目を閉じて、
「撤収する。死体は使えるものを剥ぎ取った後、なるべく目のつかないところへ埋める。本隊に合流するぞ。今日中に街道を離れる、急げ」
「了解」


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