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●◎短編小説・曝し場◎●
278
:
空飛ぶ蛸の話 6/14
:2004/10/14(木) 22:35
する凧を観察するのは勘弁願いたい。それなら家でぼうっとしていたい。
だけど僕の願いは儚く消えた。
階段の踊り場で折り返し、屋上へと続く扉の前に立ち、良太がノブを捻る。呆れるほど明快に扉は開いた。
「おお、開いた!」
開けた良太が驚愕している。
僕も驚いたけど、寧ろ開いた扉の向こうから流れ込んできた冷たい風の方に驚愕した。
寒い。凍えるほどではないけど、少なくとも指先を露出させることは避けたい。僕はポケットに手を突っ込んで屋上に出た。
「うわ、さみー」
「同感」
良太もポケットに手を突っ込んだ。長身のためか様になっている。
並んで歩いて扉と向かい合っている金網まで行き、金網にへばりついて空を見る。空は夕暮れ、赤みがかっていて、濁った灰色の雲が所々に浮いている。
凧の姿は見えない。
「まだいねーな、宇宙怪獣」
良太はしかめっ面で忌々しい口調だった。
「いや、凧だよ」
「分かってるよ」
また誤解されているように思ったけど、黙っておいた。天は二物を与えない。なるほど、と僕は夕暮れ時の空を見つめた。
これは、そもそも間違っている。確かに昨日、僕らは凧を見た。確かに一昨日、良太は凧を見たんだろう。しかしだからといって、今日もまた凧が現れるというわけではないのだ。そもそも予定されているわけではない。
だから空が段々と暗くなるにも拘らず、じわじわと寒さに圧倒されているにも拘らず、空に凧が見えないのは、言ってしまえば必然なのだ。
大体、そこまで興味もない。
僕は、そろそろ帰るか、という言葉をいつ言おうか迷っていた。何しろ良太には帰る意思など見受けられず、ずっと、熱心に空を見つめているのだ。
宇宙怪物は果たして、現れた。
「うを! 出たぞ!」
夜空が現れだして星が雲の隙間から見え始め、そろそろ帰るか、という言葉をさり気なく宣言しようとしたその時、隣の良太が仰け反って叫んだ。
その声に烏が応じた。
いや、それどころじゃない。僕は金網にへばりつき、目を走らせる。
い・・・・た?
「・・あれ、か?」
確かにいた。半円というよりも円に近い形の、根元が幅広で先が尖っている八本足のある、蛸のような形をした凧。ただ。
「で、でかっ!」
良太が叫んだ。
確かに、でかい。昨日のは、単に距離のせいかもしれないが、三十センチといったところだった。しかし今日、今現在、遠くに見える蛸型の凧は、直径で二メートル近くあるように見える。
あれは目立つなぁ。
僕はある種の感嘆を覚えた。
「よし、よし、よし」
良太が勢い込んで手をばたつかせるので何かと思えば、良太が取り出したのは黒色の小さな双眼鏡だった。
「準備万端」
「当然だっ」
良太が双眼鏡を覗く。一体、何が見えるのか若干の興味はあったけど、僕はおとなしく良太の言葉を待った。
二十八秒後、良太が眉を歪めた。
「・・・・何だ、あれ?」
それは僕の科白だ。
空に目をやれば、変わらず凧が浮いている。
しかし空の暗さのせいで糸は確認できない。
「・・・・あれは・・・・よし」
頷くと同時に双眼鏡をポケットに入れ、駆け出した。
「行くぞっ!」
どこに、という問いは届かないだろう。僕も駆け出して屋上を出て、階段を駆け下り、恐らく誰よりも短時間で学校から出た。
久しぶりの全力疾走に肺が酸素を求めたけど、運動神経に恵まれて普段から体育の授業を楽しんでいる良太のペースは衰えることがない。
僕は必死になって足を前に出した。
冷たい壁を連続で突き抜けているような感覚に襲われた。次第に足が重みを増して、前に出るのを嫌がっているように思えた。
それにしても、何で僕はこんなに息をきらして走っているんだろうか。一学期の頃は夕暮れ時になったらひっそりと帰るだけだったのに。まあ、退屈じゃないから構わないといえば構わないんだけど、それにしても筋肉痛
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