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放課後の吸血鬼

1妖怪に化かされた名無しさん:2005/02/17(木) 00:31:27
放課後の学校は気味が悪い。特に、怪談の後ともなれば…。
「う〜ん。やっぱ気味が悪い」
教室に向かいながら、黒目がちの目に不安を浮かべながら中沢哲晴はつぶやいた。

発端はこうだった。
「先週あった、吸血殺人事件ですが」
教室でダベっていると、小柄な西根恭一が切り出した。
オカルト話をする時の癖で眼鏡のツルを、クイッと上げる。
「公園で血が抜かれて殺されてたってアレだろ?」
と、ヤキソバパンを齧りながら大柄な横口和也。
筋肉と脂肪の塊の坊主頭で、どう見ても柔道部辺りに見えるが、実は文芸部の幽霊部員である。
「なんか続報があったって話は聞かないけど?」
華奢な中沢哲晴が黒目がちの目を向けて尋ねる。
「実はですね。17年前にも同じ事件があったんですよ。しかも未解決で」
「ほんとかよ」
「本当ですよ。ちゃんと新聞記事もありますよ」
西根は鞄を空けた。
「で、どこであったと思いますか?」
「んーと、同じ公園か?」
「いいえ。実はこの学校なんですよ」
西根は新聞記事のコピーを取り出した。
17年前の日付のそれには、この高校で女子生徒が殺されたと書かれていた。
「オマエ、ミョーなコトには詳しいよな」
横口が呆れた。
「はっはっは。オカルティストとしては、地元の猟奇事件くらい網羅しておかないといけません」
「誉めてないって…」
「しかも丁度、二階の西階段を降りた正面の教室だっていうから、この教室ですね」
哲晴と横口は気味悪げに教室を見まわした。
「ち、ちょっと待てコラ。ここがその現場かよ」
「うわー、ちょっとな…」
ただでさえ放課後の無人の教室は気味が悪いのに、加えて既に日は陰り教室は薄暗い。時刻も丁度逢魔ヶ時と呼ばれる頃だ。そんな中でここで殺人事件がの現場だと知った日には…。
「気味がわりぃな…」
ふと、横口がもらす。
「そうだねぇ…」
「じゃ、帰りましょうか」

99妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 23:11:01
コンコンと叩く音に窓を見ると、そこに肩胛骨の辺りから漆黒の蝙蝠の翼を生やし、身体にピッタリとした黒衣を身に纏う一人の青年がいた。
その鼻筋の通った整った顔には、深淵を思わせる漆黒の瞳と長い睫を有する切れ長で妖しく美しい眼、白い肌にくっきりと目立つ美しく朱唇。背徳の魅力を体現するぞっとする程美しい悪魔。
「あら、EE」
魅子はクレセント錠を解除して廊下の窓を開ける。
「よう、魅子ちゃん、美樹ちゃん。……えっと、確か光流君だったっけ?」
「はい」
「ねえ、上、どうなってるの?」
魅子が尋ねる。
「ああ、終わってるよ。真紀ちゃんも彼も一応無事みたいだ」
彼は窓から校内に入ってくると、翼を消してして人間の姿になる。妖しげな魅力が失せ、普通の好青年になる。
「魅子先輩、光流君。真紀先輩怪我してるかもしれないから……」
「おっと。今行ったら、馬に蹴られちまうぜ」
ニヤッとした顔で上の方を見る。


西の空は血色から落ち着いた濃紺へと変わり、東の空からは月が穏やかな光を投げかけてくる。
真紀は横たわる哲晴に近づくと、膝を付いて彼の上体をグイッと引き起こす。
「今、返すから」
優しくニコッと微笑むと、彼の右肩に再びカプッと口を付ける。痺れたように動かなかった哲晴の身体にググッと力が戻って来る。
本当はただ術の解除は念じるだけで良いのだが、ここは一つ役得という事で彼の血をもう一度舐める。
「ありがとう。助けに来てくれて。それから改めてゴメン、無理矢理血を吸っちゃって」
プハッと離した口から出てきたのは、まずは感謝の言葉、続いて謝罪の言葉。
「ううん。僕こそ、その……、真紀の事を知って逃げたりして、本当に御免」
「それは、助けに来てくれたからチャラだよ」
「じゃあ、僕も助けに来てくれたからチャラだよ」
二人は自然にフフッと笑い合う。
「ね、ねえ、哲晴……、その、もし、よかったら……、昨日の続き、しない?」
雪のような白い肌をカァッと朱に染め、グッと顔を近づける。
「え、う、うん」
哲晴も顔を耳まで真っ赤にして答えた。そして二人の影が寄り添い、一つになる。
ファーストキスは血の味がした。
そんな二人を見ているのは、東の空にかかるこれから満ちようとする月だけだった。

100妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 23:12:16
魅子・美姫・EE・光流の四人が校舎を出ると、丁度校門の所に一人の青年が現れた。柳眉に人の良さそうな垂れ目と間の抜けたような印象の大きめの口。短く刈られた髪の中肉中背でナップザックを背負っている。
しかし何より特徴敵なのは、汗だくで息を弾ませているところだ。
「あ、新倉先生、お久しぶり」
美姫と光流が僅かに笑みを浮かべて手を振ると、青年も片手を上げて笑みを帰す。
「おう、二人とも久しぶり」
確か一学期の教育実習期間以来だ。
「DEAD、おっそーい」
魅子が眉間に皺を寄せて咎める。
「ごめん、ごめん」
後頭部を掻きつつ謝罪するその姿が一変する。一瞬にしてガクッと頬がこけ、肌から血の気が失せ、眼が些かギョロッとした感じになる。それはまさにDEADの呼び名に相応しい死人の姿。同時に息も整う、というか呼吸してない。
「言っとくが、もう終わってるぞ」
EEが無情に告げる。
「あっちゃー、間に合わなかったか。……でも一件落着なんだよね?」
「そうさ。ま、お前の情報のお陰でなんとか間に合って、大切な教え子を失わずにすんだ。ありがとうな」
EEが彼の肩にポンと手を乗せる。
「いえいえ、少しでもお役に立てて何よりですよ、先輩」
笑顔でほっと胸を撫で下ろすDEAD。
「それにしても。相変わらずタクシーは使えないのか?」
「あー、ダメでした。初乗り運賃の区間で耐えきれなくなって降りました」
「不死身の始末屋DEADにも、とんだ弱点があったもんね」
魅子が肩を竦める。
「トラウマってのは、なかなか克服できないもんなんだよ」
苦笑いを浮かべて肩を竦める。実際、献血を五十回やったって先端恐怖症が克服できなかった人もいるし、屋上で仕事をし続けても高所恐怖症が克服できなかった人もいる。
そもそもその恐怖が、唯の人間だった頃に殺された事に起因するなら、なかなか拭えないのも当然の事だろう。
「じゃあ、僕は今回は出番無しって事か」
「あるわよ。とびっきり大事なのが」
魅子はパッと美姫の手を取ってDEADに見せる。袖があちこちザクッと裂け、洗ったとはいえ血の痕跡もあり、さらにはその破れ目から見える肌には、血が止まっているとはいえまだ傷は幾つも残っている。光流の体力が尽きたため、未だ治しきれてない傷。
「美樹ちゃんが大怪我してるのよ。誰かさんの戦い方をマネした所為でね」
「え、そりゃすまなかった。すぐに治すよ」
DEADが手を翳すと、みるみる傷痕が消えていく。魅子や光流とは桁違いの体力にモノを言わせた圧倒的な治癒力である。
「あと、真紀ちゃんも怪我してるだろうから、そっちもお願いね」
「オーケー」
美姫を癒やしつつ、ふとEEの方を見る。
「あ、先輩、報告です。僕、彼女ができました」
「え、先生彼女できたんだ。美人?」
光流が食いつく。
「おう、とびっきりの美人だ」
「おめでとうございます」
美姫は普通に祝福する。
「ありがとう」
「よし、詳しい話は後ほど打ち上げで聞こうじゃないか」
EEがそう締めくくった。

101妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 23:18:06
何処とも知れぬ山の中の木造校舎。その一室の戸がガラリと開かれる。
ズカズカと足音高く入ってきたのは首無し少女。部屋に幾つもある木製の棚には、老若男女の無数の首がズラリと置かれている。
少女は首がなくても見えるのか、迷うことなく歩みゆき、その中にある一つをしっかと手にする。それはさっき、美姫に切り裂かれたのと寸分違わぬ少女の首。
「お帰り」
スカートの長い、紺ではなく漆黒のセーラー服を着た長髪の少女が戸口にフッと現われる。
「ただいま、魔子ちゃん。美奈萌ちゃんは?」
自らの生首を小脇に抱えて振り向き、彼女は問う。
「それならさっき、泣きながら帰って来たわよ」
抱えられた生首が安堵の表情を浮かべる。
「そう。良かった、無事だったんだ。魅子め、憶えてなさいよ。今度あったらただじゃおかないから」
そうギロッと凶悪な表情を浮かべると、再び問う。
「で、『手駒』の方は?」
「死んだわ」
セーラー服の少女は、事務的に答える。真理華は肩を竦める。
「チッ、使えないわね。しゃーない、次の手駒を探すとしますか」
闇に包まれた不気味な木造校舎、二人はその暗がりの中へ歩み去っていった。

102妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 23:18:43
とある日曜日、少し離れた街にある駅に真紀と哲晴は居た。
休日にも拘わらず、二人はセーラー服と学ランという学校行きの姿をしている。実際、哲晴は家族には学校の用事と称して出かけている。
「ゴメンね。付き合わせちゃって」
そう頭を下げる彼女に対して、頭を振る彼。
「ううん。むしろ真紀に関われる方が嬉しいんだ」
にっこりと笑う彼に、真紀の頬がカッと熱くなる。
「おっ待たせー」
いつもの脳天気な口調で魅子が駆け足でやってくる。こちらもまたブレザー姿、即ち学生の正装である。
「じゃ、行こうか」
そう行って魅子は二人を先導し、駅から少し離れた寺院に付属する霊園へとやってきた。
入り口には花屋兼墓参り道具の販売・貸出をしている店があり、一同はそこで花束と線香を買って手桶と柄杓を借りて墓地の奥へと進む。
一坪単位に分譲された墓がズラリと並ぶ中、とある墓の前で魅子はピタリと立ち止まる。
「ここよ」
墓の区画内に足を踏み入れ、墓石の脇にある墓碑にトコトコと近づく。何人もの戒名と本名、死亡年月日と享年が彫り込まれているなか、魅子が指し示したのは17年前の日付と17歳という享年そして女性の名前。
真昼間にも関わらず、真紀の視界がキューッと暗くなる。ハアハアと息が荒くなり、顔は蒼白になって額からは冷や汗がタラリと垂れた。
今日は、真紀が生まれてすぐに殺した少女への初めての墓参りだ。今までは魅子が、まだ気持ちの整理がついてないだろうと延々と先延ばしにしていたのだが、ようやく許可してくれたのだ。
墓に付属する花立てに花を添え、柄杓で手桶の水を墓石にパシャッと掛け、火の点いた線香を手向け、三人は真紀を先頭にして合掌して黙祷する。
「人払いの結界は張ってあるから」
そう魅子が呟くと、項垂れてた真紀の眼から涙がボロボロとこぼれる。
「ああ、ごめんなさい、ごめんなさい。殺してしまってごめんなさいぃぃっ。う、うあああああああっ」
その場でガクッと跪き、地面に触れる程顔を伏せ、真紀はただひたすら泣き続け謝罪の言葉を紡ぎ続ける。
哲晴は彼女の傍らにしゃがんで肩にそっと手を置くが、それ以上の事はできない。
心の中でずっと詫び謝り悔い悩み続けた、真紀の罪の咎の相手。何度も幾度も繰り返し見続けた悪夢の中で彼女を糾弾する血塗れの少女。
どれだけの時間が経っただろう、やがて魅子は声をかける。
「気は済んだ? 真紀ちゃん」
「グスッ……ヒック。……うん」
泣きじゃくりつつも答えを返す。
「ねえ、真紀ちゃん。大河内君——暁学園のリーダー——とも相談したんだけど、故郷に帰ってきたし、正体も過去も知ってる彼氏もできたし、お墓参りも済ませた。これでいろいろと区切りが付いたんだし、もう『転校生』を辞めてここで暮らさない?」
のそりと立ち上がると真紀はゆっっくりと首を横に振る。
「ううん。やっぱり辞められないよ。彼女みたいな目に遭う人を一人でも救わないと」
「真紀ちゃん。死んだ人はもう居ないんだよ? どんなに人を救ったって生き返る訳じゃ無いし、真紀ちゃんに『許す』なんて言ってくれる訳でもない。だから償いなんて、もう……」
「償いじゃないよ」
強い意志を感じさせる、キッパリとした言葉に真摯な表情。
「ボクは人間を守りたいんだ、助けたいんだ。だってボクは、人間が好きだから」
そう行って哲晴を見る。彼の頬に僅かに朱がさす。
「でも、卒業まではここに居させて欲しい。出張とかはするから、哲晴と一緒の学校で過ごさせて欲しい」
「オッケー」
魅子が是を返すと、真紀は改めて哲晴の方へ向く。
「ねえ、哲晴。お願いがあるんだ」
「僕にできる事なら」
その真摯な眼差しに半ば気圧されながらも答える。
「ボクは卒業後、また転校生に戻る。でも、毎回、必ず哲晴のところに戻るから。だから、ボクを待ってて欲しい。ボクの帰る場所に……居場所になって欲しい」
「うん。君を待ってるよ。僕が真紀の『黎明の扉』になるよ」
哲晴が真摯な表情で答えると、真紀はパアッと輝くような笑顔を浮かべる。
「ありがとう、哲晴っ」
真紀が感極まって別の理由で涙を流してギュッと抱きつくと、哲晴が真っ赤になる。
——それって、ほぼプロポーズじゃない?——
魅子は心の中でツッコミをいれつつ、二人を優しい目で見詰めていた。

103妖怪に化かされた名無しさん:2023/06/01(木) 22:41:35
駄ー目駄目だよ、ここから先は、知っちゃいけない見ちゃいけない。
駄ー目駄目だよ、そこから先は、入っちゃいけない来ちゃいけない。
闇の魔物は牙研いで、君達を狙ってる。
駄ー目駄目だよ、近付いちゃ、駄ー目駄目だよ、駄目、駄目、駄目。

駄ー目駄目だよ、そこまでは、忘れちゃいけない見なきゃいけない。
駄ー目駄目だよ、そこからは、戻っちゃいけない逃げちゃいけない。
闇の顎は血に飢えて、君達を待っている。
駄ー目駄目だよ、近付いちゃ、駄ー目駄目だよ、駄目、駄目、駄目。

神宮寺(暁学園幹部)「何、この歌?」
大河内(暁学園首領)「ほら、90年代に花子さんとかの学校怪談が流行ったじゃない? それで作った歌なんだ」


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