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放課後の吸血鬼

94妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 23:00:23
美姫は周囲の様子を探るが、自分以外の気配はない。フウッと息を吐いてその場にくずおれる。全身が重く怠く疲れ切っているし、両腕も傷もズキズキと傷む。
真紀先輩のところへ駆け付けたいが、強烈な疲労感で身体が動かない。それに水に引き込まれた魅子先輩の事も心配だが、異空間の水の中には自分は手出しできない。
今の自分は唯の一人で何も出来ない。それはとても心細い。
——こういうとき側に居てくれたら——
ふと、クラスメイトの少年の事を思い出してしまう。山の神の血を引き、それゆえにお多福っぽいぽっちゃり顔で、スケベで好色で女好きの半妖アイツ。
と、そのとき、哲晴が去ったのと反対側の廊下からタタタッと駆け寄ってくる人影があった。
「美姫ーーーーっ! 大丈夫か!?」
それは聞き覚えのある声、ここでは聞けるはずのない声、そして今聞きたかった声。
「み、光流なんでここに?」
巻田高校の制服である学ランに身を包んだ、ぽっちゃりとした顔つきの眼の細い少年手塚光流が美姫に駆け寄る。彼は数度深呼吸して呼吸を整える。
「今日は、今日だけは来なきゃいけないって気がしたんだ」
彼もまた、ESPレベルの直感の持ち主だ。
「だから、魅子ちゃんに電話して……なんとか、間に合ったのかな?」
ケータイもポケベルも持って無いはずだから、おそらく直感だけで学校にいると思って来たのだろう。魅子ですら困難だったというのに、この少年は執念というか何というか……。
——愛の力——
美姫は突然思い浮かんだ言葉にギョッとする。と、突如光流は両手で美姫の両手をしっかりと握る。彼女の顔が、一瞬でボッと耳まで真っ赤になる。
「え、な、何」
狼狽える美姫に彼は優しい視線を投げかける。
「バカ、ヒーリングだよ。腕がズタズタじゃないか」
美姫が身に纏う巻田高校の制服であるセーラー服の袖はズタズタに切り裂かれ、血が滲んでいる。
握られた手からポウッと暖かい力が流れ込み、美姫の両腕の痛みがゆっくりと和らいでいく。同時に心にも何か暖かいものが流れ込んで来た。


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