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放課後の吸血鬼
93
:
妖怪に化かされた名無しさん
:2020/03/20(金) 22:29:58
真理華と美姫の攻防は続く。
「キャハハハハッ、”フニャチン”だって。貴女そういう言葉も使うんだ」
ガラスの刃による攻撃の手を緩めず、真理華は笑う。
「単なる受け売りですよ、DEADさんの」
美姫も黒髪で攻撃を受け、できなければ躱す。しかし躱しきれず浅い切り傷がいくつかできる。
「まさか、『始末屋DEAD』!?」
問い返す。その声色には嘲笑はない。
「ええ、もうすぐここに来ます。女郎蜘蛛の結界を見破ったのもあの人です」
針女は勝ち誇ったようにニヤリと笑う。
「クソッ!」
苛ついたように腕を大きくブンと振ると、ガラスの刃がヒュッと飛んでくる。
「だから、時間稼ぎだけで充分なんです」
黒髪の刃はスカッと空を切り、胴への直撃を避ける為にやむを得ず再び左手で受ける。妖怪の身体は人間よりはるかに頑丈で痛みにも強い。とはいえもう左腕で受けるのも限界だ。
「ふふん、その前に貴女くらいなら切り刻めそうね」
真理華は口もないのに饒舌だ。そして目もないのに狙いも確かだ。美姫は相手の視線から攻撃を読む事ができない。だから受け損なって、正直ジリ貧だ。
——首無しの真理華——
——鞠突きの少女幽霊——
——鞠突きの少女で、頭がない?——
彼女は右手を振るって刃を飛ばし、左腕では緋色の鞠を小脇に抱え続けている。
——まさか!——
咄嗟に右腕を犠牲にしてガラスの刃を受けると、血飛沫とともにズンと痛みが走った。そして空いた髪がヒュルッと伸びて真理華の腕の鞠を掴み、グイッと引き寄せる。
美姫はなんとか動く右手で鞠をパシッと受け取ると、真理華の動きがピタリと止まった。
「やっぱり、ね」
そう言って、美姫は真理華に髪の毛の巻き付いた鞠をズイッと突き出す。
「これ、貴女の首でしょう?」
ボールがグニャリと変化し、おかっぱ頭の凶悪な表情の少女の生首となる。その目が美姫をギロリと睨む。
ニヤッと凄絶に笑った美姫の黒髪が、生首にギリッと食い込み、首無し少女の身体が苦悶にブルリと震える。
「や、止めろぉぉぉぉ!」
絶叫を上げた真理華の首はズバッと両断され、そして胴体ともども幻のようにスウッと消え失せた。
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