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放課後の吸血鬼

92妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 22:06:03
美姫は戦士だ。高校生であるものの、暁学園に属する正義の妖怪として悪の妖怪達と幾度も命のやりとりをしている。だからこんなときでも冷静に判断し、すべきことはすぐにわかる。
「中沢君!」
正面を見つつ、背後に庇っている未だ腰を抜かしたままの少年に語りかける。
「は、はい」
目の前の超常の戦いに呆然としていた少年は、ハッと我に返る。
「悪いけど、とっとと逃げてくれませんか? 庇いきれそうにないですから」
眼前の仇敵から視線を離さず、背後に語りかける。
「は、はい」
美姫がチラリと横目で見れば、彼はのろのろと立ち上がったところだった。
「あと、できれば真紀先輩を助けて欲しいんです」
彼が一瞬ギクリと強ばる。
「真紀先輩は、他人の血を吸うとパワーアップできます、昼間でも」
さらに黒髪の刃とガラスの刃がガキンと打ち合う事数合、しかし美姫の背後の気配は動かない。仕方なしに、彼女はギリギリの賭けに出た。
ゆらりと歩み、哲晴の左横へと移動する。先手はこちらからだから敵は後手、つまり攻撃への受けに回らざるを得ない。だから取り敢えず哲晴へ攻撃はされないだろう。
「真紀先輩を、死なせたくないですか?」
真理華へ攻撃をしつつ、美姫は問う。
「う、うん」
力なく答える。
「真紀先輩のこと、まだ好きですか?」
美姫は攻撃をしつつ再び問う。しかし答えは沈黙だ。
「好きなんですか!?」
再度強く問う。
「あ、ああ」
ようやく帰って来た答えは是だった。だが彼はまだ動かない。
スウッと一息吸ってから、美姫は右腕で哲晴の胸ぐらをグイッと掴む。顔を彼に向けつつも、視線は真理華から離さない。勿論、黒髪による攻撃も途切れさせない。
「テメエ! 惚れた女が殺されようとしてて、お前なら助けられるのに、何もしないつもりかっ。このフニャチン!」
その刹那、髪での攻撃は滞り攻守は逆転する。今度は真理華が放つガラスの刃を美姫の髪が受ける形だ。しかも困った事に相手の命中精度の方が上で、こちらの迎撃の髪をすり抜ける。美姫はやむを得ず左手を犠牲にして受けた。パッと血飛沫が舞いザクッとした痛みが走る。
しかし、幸いにして怒気を込めた言葉や血飛沫は彼の魂に届いた。
「あ、ああ。解った」
呆然としていた彼の表情に、僅かに覇気が浮かぶ。
「だったら、行って下さい、早く!」
哲晴は振り返らず、ダダッと駆け出した。


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