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放課後の吸血鬼

91妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 22:05:32
「首無しの真理華……」
美姫が緊張の面持ちでゴクリと唾を飲む。冷や汗がタラリと垂れる。黄昏学園幹部にして、陰険な隠謀家。学校の陰から陰へと渡る能力の持ち主。先程飛んで来たのは、彼女の妖術『ガラスの刃』だろう。
「お久しぶりね、魅子ちゃん。お元気だった?」
首無し故に表情の読めない筈の彼女だが、どこからか出している声により嘲笑っているのがわかる。彼女が右手のペットボトルをポスッと床に放り出すと、蓋のないそれからトポトポと水が零れ落ちる。
「気をつけて、それにも何かが潜んでいるから」
魅子はスタッと一歩前に出て、尻餅をついた哲晴と戦闘態勢の美姫を庇うように立つ。そして一呼吸置いて気持ちを落ち着かせる。
「やっぱりアンタだったのね。真紀ちゃんの事調べ上げて、生まれ故郷のこの学校に誘い込んで……」
「ピンポーン。大・正・解っ! いっやあ、まさか本気で転校までしてくるとはね。しかも都合良く彼氏まで作ってくれたから、心をズタボロにするのに丁度よかったよ」
真理華は広げた右手を本来口がある辺りに上げ、キャハハと笑う。
「あとは”仕上げ”をしようと思ったのに、とんだ邪魔が入っちゃった」
「仕上げ?」
美姫が鸚鵡返しに問う。魅子は表情をさらに険しくする。真理華は口元の辺りに手を当てたまま仰け反って笑う。
「あ、魅子ちゃん。カズ君の首、返してあげるからさあ、代わりにその男の子の首、くれない?」
言うが早いか真理華はブンと右手を横に振るう。瞬時に透き通った三日月状の刃がヒュッと飛来し、再び張られた輝く障壁とガツンと相殺される。弾かれた刃の軌道は低い。それは丁度尻餅をついた人の首を刎ねる位置。
「真理華ぁぁぁぁぁぁぁっ!」
狂鬼の激怒の必殺の表情で魅子がグワッと飛びかかる。外見は小学生と中学生、体格的には魅子が有利。
だが次の瞬間、バシャアッとペットボトル側の水溜まりが爆ぜ、そしてそこからビュルッと幾条もの黒い筋が空中の魅子に向かって伸び、ガシッと掴む。
「し、しまっ……」
言い終わらぬうちに、その身体はドボンと引き摺り込まれる、深さ数ミリしかないはずの水溜まりへ。
「キャハハハハハッ、やっすい挑発に乗っちゃってさあ、バッカみたい」
恐らくは無い顔に侮蔑の笑みを浮かべ、真理華は再び仰け反り笑う。
水に関わる髪使い、美姫には心当たりがある。プールを縄張りとする黄昏学園の『水死した女生徒の霊、美奈喪』だ。水底から水泳の授業中の児童や生徒を髪の毛で搦めて引き摺り込み、溺死させる邪悪な妖怪。
「……!」
美姫の腰まである髪が一瞬フワッと浮き前方へヒュッと伸びる、真理華を捕らえるべく。だが、それは更なるガラスの刃でスッパリと切り落とされる。
真理華を捕らえ、或いは切り裂くべく幾度となくヒュッと伸ばした針女の黒髪は、総てガラスの刃でズパッと迎撃される。
千日手。


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