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放課後の吸血鬼

89妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 22:03:03
話は数分遡る。
屋上から逃げ出した哲晴は、トボトボと廊下を歩く。その頭の中はグチャグチャだ。
真紀は悪の妖怪を退治する正義の妖怪で、だけど血に飢えると人を襲っちゃう妖怪で、さらには過去に人殺しをしたこともある妖怪で、でも自分を救う為に来てくれて……。
と、向こうから聞こえるタタッという足音。顔を上げれば見知った二人、魅子と美姫が廊下の向こうから駆け寄ってきた。
「あ、いた。大日向君だ」
「真紀ちゃんはドコ?」
二人は哲晴に詰め寄る。
「あ、お……屋上。多分、女郎蜘蛛と……戦っている」
歯切れ悪く答える。
「戦ってるって、まだ日中じゃない! なんでよ!」
魅子がなおも詰問する。
「ぼ、僕が人質にされて、それで真紀が呼び出されて……」
項垂れたまま目を逸らす。魅子は何か引っかかる物を感じて、彼の瞳を怪訝そうに見る。
「……!」
霊能者の持つESPレベルの直感がその奥に見える蟠る陰りに気づき、魅子が目を剥く。
「まさか、知っちゃったの? 真紀ちゃんの秘密を!」
彼の両腕を掴み、見上げてその目を見据える。
「う、うん」
「やっぱり!」
魅子が手を離して深刻な表情を浮かべる。
「え、秘密?」
美姫は怪訝そうな顔になる。魅子はふうっと息を吐くと、重々しい口調で告げる。
「この機会だから明かすけど、真紀ちゃんはね昔、人を殺したことがあるのよ」
「え?」
目を白黒させる美姫に、項垂れたままの哲晴。
「人間として生まれて、先祖返りで妖怪になった美姫ちゃんにはピンと来ないかもしれないけど、生まれたばかりの妖怪ってのは、本来とても強い”衝動”を持ってるのよ。
 そもそも妖怪は人間の想いの実体化したものよ。身体なんて『この妖怪はこういう能力を持っている』っていう想いから、物理法則だって無視して活動できるでしょ? 精神も同じよ、『この妖怪はこういう行動をする』っていう想いに縛られて、理由も意味もなくそういう行動をするのよ。
 そして、真紀ちゃんは吸血鬼よ。人の生き血を吸う妖怪よ」
「う、嘘ですよね、魅子先輩」
今まで微笑んでいるような美姫の表情が怯えに変わる。
「嘘じゃないわ。真紀ちゃんは17年前にこの学校で生まれて、そして吸血衝動に支配されて、一人の生徒を殺したのよ」
彼女と親しいものから改めて真実である事を告げられ、哲晴の心にガツンと衝撃が走る。美姫は衝撃を受け止めきれずに呆然と立ち尽くしている。魅子は交互に二人を見、さらに周囲に視線を彷徨わせる。


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