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放課後の吸血鬼

85妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 21:57:32
解放されたというのに哲晴の顔は青ざめ、困惑の視線で真紀を見る。アミは笑いを堪える表情で続けて、哲晴をスッと指さす。
「それでね。この坊やったら、貴女に尋ねたい事があるんですって」
手摺りから内側にグッと身を乗り出し、彼の耳元でさも楽しげにアミは囁く。
「さあ、尋ねてごらんなさい、『ここは、貴女の生まれ故郷ですか』って。さあ、ねえ」
真紀の全身にバシィッと衝撃が走り、闇すら見通す筈の目の視界がスッと暗転する。頭がグルグルする、脚がガクガクする、腕がブルブルする。
そのギクッと強ばった顔を見て、哲晴の顔にサッと恐怖の陰が差す。
——真紀は僕が物心つく前のこの街を知っている——
——真紀は17歳だ——
——生まれたばかりの妖怪は、その衝動のままに動く——
——そして17年前、この学校で吸血殺人事件が起きた——
凍り付いたようにじっと立ち尽くし、ダラダラと冷や汗を流す。その真紀の態度自体が無言のまま雄弁に答えを出していた。
「嘘、だよね? 真紀。真紀は正義の妖怪だよね?
 吸血鬼で、ちょっとお腹が減ったら人の血を吸いたくなっちゃう困った癖があるけど、善い妖怪なんだよね?
 人殺しなんてしない、人間の味方の妖怪なんだよね?」
答えられない、答える訳にはいかない。真紀はスッと目を逸らす。
「うふふふふ。ほらほらぁ、ちゃんと彼氏の質問にはちゃんと答えないと、ねえ?」
——もう、ダメだ——
——美姫ちゃんにも教えてない、ボクの秘密を知られてしまった——
——もう、哲晴の信頼は得られない——
——総て、終わってしまった——
顔を伏せたまま、真紀は震える声で答える。
「そうだよ。ボクが……、ボクが17年前に、この学校で人を殺した吸血鬼さ」
「そんな……」
哲晴は一歩下がる。真紀は俯いたまま、屋上の出入り口をサッと指さす。
「行って、早く。戦いの邪魔だから」
タタッと駆け出した彼がバタンとドアを閉めるのを背後に聞きいてから、真紀は顔を上げる。その両目から頬に流れる筋は、夕日の色に染まっていた。
「よくも、よくも、よくもおぉぉぉぉっ!」
ギンとアミを睨み付け、真紀は正体を現して真珠色の爪の生えた手を構える。
「あははははっ。結局のところ、あなただって人殺しの吸血鬼じゃない、それなのに人間の味方なんて気取っちゃってさ。バッカみたい」
アミも軽蔑の眼差しで真紀を眺め、その漆黒の爪の生えた手を構えた。
二人を染めるのは血色の夕日。
「シャアァァァァァッ!」
雄叫びを上げ、柵を越えてバッと飛びかかるアミとそれを待ち構える真紀。互いに黒白の爪を振るい、ガガッと斬り合う事数合、お互いに相手の斬撃を爪で受け流し、決定打はない。


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