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放課後の吸血鬼

84妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 21:55:07
アミの糸を辿っていった先は学校だった。そこには教師などは残っている筈なのに妙に人気がない、恐らくは人払いの結界。糸は校舎の中に続いている。真紀はその奥の暗がりをキッと睨んでタッと駆け込む。
——総てが始まったここで、決着をつける——
糸の続く先は校舎の屋上だった。哲晴と話をした記憶もまだ新しい思い出の場所へバタンとドアを開けて見た先には、驚愕の光景が広がっていた。
血色の夕日に照らされた屋上の北側の端にベッタリと貼られて無数の太糸が、もう一つの棟へと向かって伸びていた。それは両棟の中央を経由して反対側へとピンと張られ、さらに渦巻き状の横糸で繋がれて巨大な蜘蛛の巣を形成していた。
結界に隠されているアミの巣は、校舎の屋上に張られていたのだった。
真紀はギョッとした。多分、今さっき貼られたものではない。恐らくは真紀が転校してくる直前、アミがこの学校に巣くう事を決めたときに……。
ツッと冷や汗が流れる。つまりこの学校にいる間、彼女はじっと見られていたという事だ。掌の上で踊らされ、友——それは人質候補や犠牲者候補と同義語だ——を作り、学園生活を謳歌していたのだ、なんという失態。
いや、今はそれより哲晴だ。彼女はブルリと頭を振って思考を切り替える。その命だけでも取り返さねばならない。
哲晴は、巨大な蜘蛛の巣の端の方に仰向けでベッタリと大の字に貼り付けられていた。
「うふふふふ。良く来たわね。約束通りこの男の子は解放してあげるわ」
彼女は口元からツウッと一筋血を垂らしたまま、妖艶に蠱惑的に淫蕩に笑う。
「ただ、あんまり遅いから、ちょっとつまみ食いしちゃった」
哲晴の上半身を拘束する糸をスラリと伸びた爪でスパッと切ってグイッとその上体を起こす。起き上がった彼の顔は青ざめ、その服の襟元はガバッと大きく開かれ、昨夜真紀の付けた肩口の傷痕が再びタラリと血を流しているのが見えた。
吸血鬼にとっては、血を分けてもらうパートナーへの咬傷は即ちキスの痕であり所有の証し。その印を他人が穿つのは、略奪の宣言に他ならない。
よくも、とつい思ってもすぐに思い直す。それは自分の一方的な劣情の産物である罪の証しにしか過ぎず、絆を結んでの契約の印ではない。とは言え、心はザワつく。
「だって、若くて震えてて、でも気丈に耐えてて、いたぶり甲斐があって本当に美味しそうなるんですもの」
そう発する朱唇を舌が妖しくペロリと一舐めし、胸の内を探るように真紀の紅玉の瞳をじっと見据える。まずは哲晴の安全が第一、ぐっと堪えてこの程度の安い挑発には乗りはしない。
「でもって本当に美味しかったわぁ。あなたが我慢出来ずに襲っちゃうのも、よぉくわかるわぁ」
ニィッと嘲りの笑みを浮かべ、鋭い爪で哲晴の下半身を拘束していた糸をプチプチと切り裂く。そこに殺気めいた雰囲気や、鉤爪で襲うような予備動作は感じられない。真紀はじっとその動きを目で追う。
「このまま食べちゃいたいくらいよ。でも、ちゃんと返すって約束だったもんね」
解放した彼の脇腹を両手掴んでヒョイと持ち上げると、屋上の手摺りの内側にストッと下ろす。
「はい。お姫様が助けに来たから、王子様は帰してあげる」


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