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放課後の吸血鬼

82妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 21:50:09
あれは転校して来て間もなくの頃だった。
放課後、学校内をうろついている真紀の前にアミが姿を現した。その腕に、眠れる女生徒——哲晴のクラスメイト長谷川浩子——を抱えて。
「あら、お久しぶり、吸血鬼さん」
アミはニマッと淫蕩な笑みを浮かべる。
「……ッ! 貴様……」
真紀は一瞬にしてサッと正体を現し、真珠色の鋭い爪が生えたスラリとした指の手を掲げ、相手をギンッと睨み付ける。
「あらあら、大声出しちゃ駄目でしょ? だぁって、この娘が目を覚ましたら、始末しないといけなくなるから」
アミは長めの舌をベロリと出すと、陶酔したような表情で抱えた彼女の首筋をツツッと舐める。
「や、止めろ!」
押し殺した声で制止をかける。
「だーいじょーぶよ。あたしの牙は痛くないから」
そのまま首筋にカプッと牙を突き立てるが、長谷川が目覚める気配はない。アミはニイッと笑みを浮かべてこれ見よがしに血をチュウッと啜ってみせるが、真紀は動けない。なぜなら、女郎蜘蛛の鋭い漆黒の爪は容易に犠牲者を切り裂けるから。
知らず知らずのうちに真紀の喉がゴクリと鳴るのは、どちらの意味だろう?
「ふふっ、あなたも欲しくなったの? この娘の血って、美味しいわよぉ」
口を離すと、ポツリとついた二つの傷口から牙に赤い糸がツウッと伸びる。アミはその小さな血の泉を真紀に示す。
「ほぉら、遠慮なんてしないで、貴女もお食事したらぁ? 今なら目を覚まさないわよぉ」
紅玉の瞳で、女郎蜘蛛をギロリッと睨め付ける。
「あら? それともあたしが口を付けたところじゃ、嫌なのかしらぁ? だったら……」
アミは、スッと眼を細める。
——殺気!——
「飲みやすくしてあげましょうか?」
「やめろぉっ!」
アミは鉤爪をギラリと一閃、長谷川の腹から胸にかけてがズバッと切り裂かれ、血飛沫がパッと飛び散る。
「ウッ!」
切り裂かれた彼女は眠りから目覚めるを覚ます間もなく白目を剥く。
——ここを、血で汚してしまった!——
衝撃を受けてピキッと凍りついている真紀を見て、アミは楽しげにくすくすと笑う。
「まったく、同じ吸血妖怪のくせに人間に尻尾なんか振っちゃって、ああ、気持ち悪い」
血を流す少女をポイッと放り出し、アミはダダッと走って窓からバッと飛び出す。
——追う? ……いや、救助を優先すべき——
しかし、倒れている制服姿の血塗れの少女の姿を見た途端、ドクンと心臓が跳ね上がる。息が、できない。頭の中が真っ白になる。手足がブルブルと震えて動けない。
真紀が動けずにいると、ガラリとドアが開いて男子生徒が教室に入ってきた。目が合う。その途端に正体がばれるという恐怖から硬直が解け、真紀はダッと逃げ出した。


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