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放課後の吸血鬼

81妖怪に化かされた名無しさん:2020/03/20(金) 21:49:15
そろそろ夕暮れも近づく頃、見晴らし公園の最上階にあるベンチに真紀は腰掛けていた。
そこは昨夜、哲晴を傷つけた苦い思い出とともに腰掛け、そして魅子に慰められた場所。しかし今日は違う、そこは哲晴との仲直りの為に待つ希望に繋がる場所だ。
なお、昼休みにケータイで魅子には仲直りの件を伝え、今日の調査に少し遅れる旨は伝えてある。
真紀の頭の中に様々な思いがよぎる。
まずは襲ってしまった事を、人間に味方する妖怪だという信頼を裏切ってしまった事を謝ろう。そして、自分との縁を繋ごうとしてくれた事を感謝しよう。そのうえで、改めて、彼と……
とても幸せな想像をしていた真紀は、ゆらりと階段を上って来る人影に気付いてふと顔を上げると、そこには西根がいた。
「あれ、西根クン、どうしたの?」
——哲晴一人が来るはずだったのに、一体どうしたのだろう?——
真紀はハッとする。何故なら彼の眼は焦点が合っておらず、動きもギクシャクしている。
——やばい。これ、何か妖術で操られている——
真紀は一瞬、ササッと周囲を見渡してから本来の姿に戻る。雪色の肌、紅玉の瞳、白銀の牙、真珠色の爪、そして目付きは虎のような鋭さ。
西根が口を開く。抑揚のない単調な声だった。
「吸血鬼に告ぐ。お前の男は預かった。返して欲しくば、糸を辿って一人で来い。日没までに来なければ、男は殺す。なお、ケータイは捨てろ、さもなくば……」
西根は右手で逆手に持った短い木の枝を自分の首にピタリと突きつける。一突きすれば頸動脈が破れるだろう。
西根の向こうにいるであろうアミをジロッと睨み付けつつ、勢いよくポイッとケータイを放り投げる。公園の下の階の方に落ちてカシャっと小さな音がした。相手が約束を守る保証はないので、彼から視線は離さない。
幸いなことに、西根はそのままドサッと倒れる。近寄ってみると気を失っているだけのようだ。その首筋の辺りから一条の銀糸が伸びていた。
傾いた西日から投げかけられる光は、次第に血色へと染まっていく。その中を真紀は人間の姿に戻ってタタッと走っていた。身に纏うのは、真紀の『衣装』——妖怪が生まれつき身に着けている服——の深紅のセーラー服。
一筋の銀色の輝きは細く人気のない道を選んで、その路上に途切れること無く続いている。途中、細い路地に横口が倒れているのに気付く。意識はないが、命に別状はないようだ。ほっと胸を撫で下ろす。
——あとは哲晴さえ助けられれば、これ以上の犠牲者が出さずに済む——
だがそこに、彼女自身は勘定されていない。


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