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放課後の吸血鬼

79絶望の予兆:2020/01/26(日) 23:39:58
魅子は夕暮れの電車の中にいた。座席に腰掛けてカタンコトンという振動に揺られ、ぼんやりと今日の探索の事を考える。
地元の妖怪達も協力はしてくれるものの、日常生活の延長でのパトロールに過ぎない。女郎蜘蛛の巣の結界を考えると、せいぜいが新たな犠牲者を防ぐ程度でしかない。
だから昨日のうちに助っ人を要請しておいた。なんとなく、そうしなければならないような気もしていたし。
魅子は霊能者である、だからその勘は馬鹿にならない、きっと何かの役には立つだろう。
彼女の頭の中で、とりとめのない思索によって情報のピースがカチリ、カチリと組み合わさっていく。やがてそれは次第に悪意と恐怖と絶望の合わさったおぞましい全貌を露わにする。
「しまったあああああああっ!」
不意にピョンと立ち上がり絶叫する。顔面はサァッと蒼白になり、眼の端にはジワッと涙すら浮かんでいる。
「あああ、あたしのバカバカバカ! そんな偶然なんてあるわけないのに! まんまと乗せられたぁぁぁぁぁ!」
自分の頭をポカポカと叩いてから、そこが衆人環視の電車の中なのに気づく。
「あ、すみません」
ペコリと一礼してから急いで別の車両へと移りつつ、ケータイで真紀に連絡を取ろうとする。
――お願い、出て。真紀ちゃん――
しかし無情にもコール音は続くのみ、一向に出る様子はない。魅子の超常の直感が警鐘を鳴らす。
――ああ、不味い不味い不味い――
――もう『何か』が始まってる――
少し空いた場所で急いで美姫や助っ人のEEに電話をかける。
「とにかく、急いで! 早く! 真紀ちゃんが危ないのよ!」
ケータイ越しに小声で怒鳴る。
「あとは……アイツ、ケータイくらい持ちなさいよ! せめてポケベルとか!」
もう一人の助っ人に悪態を吐いてから善後策を練る。
――真紀ちゃんの事を詳しく知っているとなると、恐らくは『黄昏学園』――
それは、異空間にある『呪われた旧校舎』を拠点にしてる悪の学校関連妖怪の互助組織。人間に友好的な『暁学園』と真っ向から反対する存在で、幾度も幾度も戦った相手。
――そして私の妹分を狙うんだとしたら、間違いなく『首無しの真理華』――
すぐに思いつくのは、魅子に何かとちょっかいを出してくる残忍で残虐で陰湿な、宿敵であり怨敵であり仇敵。
「いろいろマズイわね……」
真摯で必死で切実な想いを抱き、魅子はギリリと拳を握り、崩れ落ちそうな心を必死に奮い立たせて車窓から目的地の方を涙で滲んだ眼でじっと見据える。
——お願い真紀ちゃん。死なないで——


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