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放課後の吸血鬼

77持つべきものは:2020/01/26(日) 23:36:00
翌朝、うつむき加減でテクテクと歩いて登校していた哲晴は、校門のところでバッタリと真紀と出くわした。二人は互いにはっとして一瞬強ばる。しかし、ともにすぐさま暗い目をスッと目を逸らし、そのまま離れて昇降口へと進んでいく。
哲晴が教室で自分の席へ腰を下ろすと、後ろからドンッとタックルをかます奴がいた。野上である。
「おーい、哲晴! おまえ抜け駆けしやがったな! うらやましーぜ、この野郎っ!」
そのままグッとヘッドロックを極め、哲晴の頭に拳をグリグリと押し当てる。
「ん、なんだ?」
横口が尋ねる。
「こいつよー、昨日、転校生とデートしてたんだぜ!」
「エーーーーッ」
周囲から一斉に驚愕の声。そしてできるザワザワとした人集り。
「え、いや、違うって。頼まれたから、ただ街を案内してただけだよ」
慌てて首をブンブンと振る哲晴。妖怪云々を除いても、周知されるのは気恥ずかしい。
「二人っきりでだろ? そ・れ・を、デートって、い・う・ん・だ・よ!」
尚もゴリゴリと拳を捻り込む。
「あ、いや、そ、その……、喧嘩しちゃったし……」
しどろもどろの哲晴。
「あん?」
野上がパッとヘッドロックを外し、怪訝そうに尋ねる。
「そ、その……真……大日向さんを……、その……傷つけるような事、言っちゃって……」
西根が促す。
「えっと、それで?」
「ぼ、僕が悪くて、そのまま喧嘩しちゃって……」
しばしの沈黙の後、野上が断言する。
「なーんだよ、結局はフラレたってことだろ?」
「あ……、うん。そうだね……」
ガックリと項垂れ、哲晴は沈黙する。
「チッ、つまんねーの」
野上は黙ったまま項垂れている哲晴から離れると、そのままスタスタと自分の教室へと戻っていった。
外野がいろいろと聞こうとするが、腕組みをした横口がズイッと立ちはだかりジロリと一瞥する。これ以上は聞き出せないとわかると、人集りも三々五々散ってゆく。
その近くで、西根はツツッと横口の袖を引く。
「んだよ?」
横口が視線を合わせると、彼はスッと教室の出口へと視線をやる。横口はピタッと口を噤むとそちらの方へと歩き出した。二人して教室を出てから、改めて横口は尋ねる。
「で、何の用だよ。中沢の事なんだろ?」
「ええ。中沢君があまりにも落ち込んでるんで、一肌脱ごうかな、と」
「どうするんだ?」
「縒りを戻せたらいいかな、と」
「できるのか?」
「向こうに話を聞く気があればワンチャンかと」
「なるほど」
昼休み。哲晴はいつものように横口・西根と一緒に、コンビニで買ったパンやおにぎりで昼食を済ませる。
「なあ、中沢」
横口がおもむろに切り出す。
「んぁ?」
寝不足と落ち込みでぼんやりしていた哲晴は、惚けたような声を出す。
「ちょっと聞くけどな、お前、仲直りしたいと思うか?」
「仲直りって……真……大日向さんと?」
誰と言わなくたって、すぐにわかる。
「そうだ」
横口はじっと見る。
「えっと……」
「どうなんだ? はっきりしろ」
「まあまあ。横口君、ちょっと待って」
割って入った西根が哲晴の方を見る。
「さっき野上君に聞いたんだけど、転校生のほうでも君とのデートが話題になったそうです。でもって、向こうでも『自分が哲晴君を傷つけた』とかって言っているそうです」
「え……」
「何があったか知らねえけどよ、お互いそれぞれ自分が悪かったと思ってるんだろ? だったらまだ仲直りする余地あるんじゃないか?」
「それに今の中沢君、見てて辛そうだし。なんだったら、もう一度話し合う機会をセッティングしましょうか?」
不意に哲晴の目に生気が戻る。
「さすが横口、西根。心の友よ」
どっかのガキ大将みたいな台詞を吐くと、ガシっと二人の手を握る哲晴であった。


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