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放課後の吸血鬼

75妖怪に化かされた名無しさん:2007/08/17(金) 01:00:19
トコトコと石段を登りきった所で、魅子は公園を見まわす。と、もう1階分上の広場にチラリと人でないモノの命の輝きが見えた。
「今晩は」
17年前、この場所で初めてかけた言葉を繰り返す。
「ここは寒いでしょ? もっとあったかい所へ行こうよ。あとお腹も空いてるでしょ?」
昔と同じく、コーヒーとサンドイッチ――ただし、今回はコンビニで買ったもの――を差し出す。

真紀と魅子は、並んで公園のベンチにちょこんと腰掛ける。手にコーヒー缶の温もりを感じつつ、真紀は強張った唇からポツリポツリと語った。
「あいつの……女郎蜘蛛の……匂いがした。多分……ボク達の事、見てたんだと思う。猫の血で……ボクのこと……、それで、哲晴を……。ボク……ボク……、やっぱり……、血に飢えたバケモノなんだ」
魅子は俯いていた真紀の肩にそっと手をかけ、その頭を自分の胸でかるく抱き締めた。すると、今まで溜めていた感情が一気に吹出す。
わんわんと泣きじゃくる真紀に、魅子はじっと胸を貸していた。
「噛んだのは、首筋?」
鳴き声がようやく一段落した時、咎めるでもなく魅子がふと尋ねる。真紀はふるふると首を横に振った。
「ううん。肩」
「オッケー。大丈夫よ。真紀ちゃんはバケモノなんかじゃない」
ポンと、背中に手を置かれ、真紀はゆっくりと顔を上げた。
「だって、もしバケモノだったら、肩じゃなくて首を狙うもん。頚動脈なんて気にしないで」
魅子は微笑むと、真紀から離れてぴょんと立ちあがった。
「じゃあ、あたしはこれで帰るから」
そしてクルリと振り向く。
「言っとくけど彼はね、絶対に真紀ちゃんの事、誰にも喋ったりはしないから。だからこの件に関しては、あたしは手を出さないからね」
腰掛けたままの真紀に、ずいっと引き締めた表情の顔を寄せる。
「真紀ちゃんが吸血鬼である以上、いずれは立ち向かわなきゃならない問題なんだから、真紀ちゃん自身でなんとかしなさい」
そういった唇で、そっと怯えた唇に触れる。
「いい?」
一瞬の触れ合いの後、唇は再び言葉を紡ぐ。
「うん……」
サンドイッチの女神様の口付けを受けて、真紀の固く結ばれた唇が少し緩んだ。


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