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放課後の吸血鬼

6554:2005/09/10(土) 21:19:08
哲晴と真紀は、二人で夕暮れ時の街を歩く。既に日は暮れて、空は薄暗い。沈んだ太陽の代わりに、街頭が弱々しく輝き、時折、帰宅途中の学生やサラリーマンとすれ違うくらいで、人通りは少ない。
地図で記された場所をに辿りつくと、二人でさっと辺りを見まわす。人通りがなくなるのを見計らって、真紀が素早く正体をあらわしてくんくんと臭いを嗅ぐ。
そんなこんなで十数ヶ所を巡り続けたが、未だ“当たり”はない。

「ごめんね。なんか騒がしい連中で」
と、真紀。
「いや、面白い友達だね」
と、ニコッ微笑む
「あ、…そう言えば、あの二人って何の妖怪だったの? あ…、聞いちゃいけない事かったかな?」
少し、すまなさそうな顔になる。
「大丈夫だよ。あの二人は特に正体を隠してはいないから。妖怪の事を話せる相手なら大丈夫だよ。
 まず魅子先輩はね、“霊能者”だよ。あ、霊能者って言っても、霊能力を持った人間じゃなくてね…。…妖怪の産まれから説明した方がいいかな?」
考え事をするように、少し上の方を見る。
「妖怪はね、普通の生物みたいに生まれるんじゃないんだ。人間の持つ“想い”から生まれるんだ」
「想い?」
「うん。人間が抱く様々な“想い”。喜・怒・哀・楽とか、空想・妄想・理想その他いろいろなもの。そういった“想い”が、たまに命を持って実体化することがあるんだ」
「それが、妖怪か…」
ぽつりと呟くと、真紀がコクリと頷く。
「そう。いるかもしれない、いて欲しい、いたら嫌だ…、そんな風に強く想えば想う程、妖怪になりやすんだ。しかも、その想いを抱く人間が多い程、想われる時間が長い程、産まれやすい。
 だから妖怪は、神話とか、昔話とか、都市伝説なんかから産まれやすいし、時には小説や漫画への想いから産まれた妖怪だっているんだ」
「へえ…。すると、妖怪が伝説を産むんじゃなくって、伝説が妖怪を生むのか…」
「それは、妖怪自身にもはっきりしないんだ。
 妖怪は伝説とかが実体になったものだから、だいたい伝説の通りのものになるんだ…。姿形、能力、性格や行動、そして記憶すらね」
「そっか、本当に体験したのか、それとも記憶ごと生まれたのか、はっきりしないんだ」
「そう言う事。でもって、生まれたばかりの妖怪は、伝説通りの行動しかできない。理由もなく、理屈もなく、身体と同じく、ただ人々がそう思い浮かべたというだけで、そう振舞う。訳もなく人を驚かしたり、悪戯したり…」
「あの女郎蜘蛛みたいに、人を襲ったり?」
光の加減か、スッと一瞬、真紀の顔が翳ったような気がした。
「…そうね。ただ、あいつは違うよ。最初はそうだったとしても、いつかは自我を得て、自分の行動や存在意義について考えるようになる。どんな妖怪でもね…」
キッと、何処かにいる女郎蜘蛛を睨みつける。
「あいつは、その上で人を襲い続ける事を選んだんだ。だから、許せない」
「その、“自我を得ていない妖怪”だったら?」
「最寄りのネットワークが見付けて保護するよ。人間から妖怪の存在を隠すためにね。そこで大抵の妖怪は自我を得る。けど、たまに、それでも人間に危害を加えつづける妖怪がいる。その時は…」
グッと拳を握り締め、最後の言葉をゆっくりと吐き出す。
「処罰する」


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