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放課後の吸血鬼

5446:2005/06/17(金) 02:38:22
「で、哲晴クン。早速本題に入るけど、協力っていうのは、この街の高い建物を教えて欲しいって事なんだ」
そう言って、フェンス越しにグラウンドや、その向こうの町並みをじっと眺める。
「あの女郎蜘蛛はね。ビルとかの、高い建物の間に糸を張って巣を作るんだ。だから、巣を張れそうな場所を、教えてほしいんだ」
「ええと…。そんなに目立つ事をして、騒ぎになったりしないのかな?」
哲晴が疑問をぶつける。
「うん。それなんだけど。“人払いの結界”っていう術があってね。あの女郎蜘蛛は、その術で周りの人間の意識に影響して、自分の周囲から注意を逸らさせる事ができるんだ。
 ほら一昨日、ボクの転校初日、ウチのクラスの野口の噛まれた時だけど、キミは結構遅くまでトイレ掃除してたでしょ。あれは多分、結界の影響でウチのクラスから遠ざけられてたからだよ。
 それから、昨日もなかなか4階の教室に戻れなかったよね。あれも、アイツがあそこで食事してたからだよ」
そう言われば、思い当たる。昨日、いつも教室で待っている二人の事を、なかなか思い出せずにいた。多分教室から注意を逸らされたせいで、教室に関する事を、一時的に考えられないようにされてたのだろう。
「だから、この街の人々も、すぐ頭の上に蜘蛛の巣が張ってあっても、誰も気付かないし、気付けない。結界の中から、直接何かされるまでは、ね」
町並みのどこかにいる女郎蜘蛛を、ギンと睨みつけるように、一瞬険しい表情をする。
あのバケモノがすぐ傍に潜んでいても気付けず、一旦巣の中に攫われたら、叫んでも誰にも気付かれない。眼下の平和な町並みをじっと眺めながら、哲晴はぞっとした。
「おまけに、普通の術なら10分もすれば解けちゃうけど、――ほら、昨日キミも結局は、教室に戻れただろ?――巣に張ってあるのは半永久的で、妖怪にも効くくらい強力なんだ」
「じゃあ、どうやって…」
真紀を見ると、彼女は遠くの町並みを見たまま答える。
「元々意識を逸らすだけだからね。自覚すれば、何とかなるよ。
 まず、怪しい所を虱潰しに調べるんだ。実際に出向いて、歩きまわって、ね。それで行った場所を、しっかりと憶える。後で少し離れてから、地図を見て、憶えているところだけチェックする。
 もしそれで、憶えて無い場所があれば、それが意識を逸らされた場所、つまりは結界のある場所だよ」
真紀がこちらを向くと、瞳がキラッと光った気がしてドキリとする。
「だから、怪しい場所をピックアップするのに、この街に詳しいキミが必要なんだ」
最後の一言だけなら、とてもうれしい、などとつい妄想してしまう。


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