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放課後の吸血鬼

5143:2005/06/01(水) 00:43:41
真紀は布団の中で、とろとろとまどろむ。
岩手の高校で女郎蜘蛛と出くわした時の事だ。
なんとか女郎蜘蛛を追い払った後、襲われていた二人――いつも一緒につるんでいた典子と美千代――の戒めを爪でスパッと切る。
二人は、きゃあっと悲鳴を上げて逃げ出す。
――違う。実際は怯えた目でこちらを見ていたものの、大人しく誘導されて下校した――
思わず、二人にすがるようにスッと伸ばした手には鋭い爪。はっとして自分の姿を見ると、肌は血の気を失ったままで、床には影もない。
――違う。実際はすぐに人間の姿をとった――
その真赤な爪からは、ポタリポタリと血が滴り、口からもタラリと血が流れる。手も、顔も、制服も、全てがベッタリと赤黒い血に染まっている。
――違う。実際は自分は血に染まってなんかなかった――
気がつけば、周りにはざわざわとした黒山の人だかり。
――ああ、そうか。これはいつもの夢だ――
群集はすべて、見知った顔からなる。忘れる事もできない、様々な転校先で親くなった人々。かつては親しかった人々。
ボクの正体を知って怯えた目で離れていった、かつての親友。露骨に無視するようになった元カレ。悪の妖怪から助けたのに罵声を浴びせた教師。刃物を持って向かってきた優しかった先輩。恐慌をきたした憧れられた後輩。そして助けきれなかった犠牲者。
血塗れの少女が先頭になり、ざわめきのように、口々に罵声を、糾弾を、誹謗を、中傷を浴びせてくる。もはやわーっと交じり合って、一つ一つの言葉が判別できない。
そして雨の様に、波の飛沫のように、次々と石や空き缶や、ゴミが投げつけられる。
夢だとわかっていても、何度も見た夢でも、居たたまれなくなってボクは逃げ出す。
気がつけば、薄暗い急斜面の雑木林に逃げ込んでいた。もう、人は追ってこない。
それでもボクは先へ進む。何度もズルリと滑り、バタリと転び、必死に斜面を登っていく。
――そろそろだ――
真紀の行く手、坂を登りきったところに、雑木林が切れて星々の輝く夜空が見えてきた。
――そろそろ来てくれる――


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