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放課後の吸血鬼

5042:2005/06/01(水) 00:36:21
南の空からは、満月に足りない月が凍てついた光を投げかけていた。
他に灯りもついてない木製の古い校舎を、真理華はボールを手に捧げ持ち、ギシギシと歩いて行く。肩をいからせ、一歩ごとに一旦歩幅よりも前に、ブンと蹴るように足を投げ出す。
その後から美奈萌は、ポタポタと水を滴らせながらペタペタとついて歩く。
「ほんっっっと。な〜にが、こんな小娘で二人で大丈夫なのか、よ。これだから世間知らずの妖怪は嫌なのよね。妖怪(ひと)を外見年令で判断するなんて。
 そもそも、復讐を急ぐ必要なんてあるのかしらね。急いては事を仕損じるっていうし、もっと慎重にチャンスを待つべきなのよ。どうせ時間はたっぷりあるんだし。
 まったく、仕事でなきゃ、あんなのと関わりたくないわね」
口も無いのに、ベラベラと雄弁に悪口雑言を吐きまくる。
「アイツ、キライ」
美奈萌が、死んだような表情でポツリと呟く。
「でしょ? でしょ? まぁったく、ワガママで、タカビーで、自己中心的で、自分勝手で、口うるさくて…、ほぉ〜んと、やになっちゃう」
「近親…憎悪?」
固まったような表情のまま、ぼそりとそう呟く。結構辛辣だ。
「ちょぉっと、美奈萌ちゃん。それ、どういう意味?」
拗ねた口調で、体ごとグルリと後を向く。首が無い以上は全身で振り向くしかないのだ。
「あたしのことも、嫌いなの?」
ボールを両手で抱えたまま、ヒョイと背伸びをする。頭があれば、目の高さを精一杯合わせようとする行動だ。
「真理華ちゃんは…、好き。…やさしいから」
「ありがと、美奈萌ちゃん」
ボールを左手で持つと、びしょ濡れなのも気にせずに、美奈萌の頭をなでなでする。無表情のまま、美奈萌の頬だけがポッと朱に染まる。
美奈萌も、真理華の両肩の間の空間に手を伸ばして、ナデナデと何も無い宙で手を動かす。
「え〜と…?」
もしそこに顔があるなら、困惑した笑顔を浮かべたかもしれない。
「お返し…。真理華ちゃんに…、なでなでしてもらうと…、気持ち…いいから…」
「ありがとう。美奈萌ちゃん」
ボールを足元に置いて、身体がが濡れるのもかまわず、ギュッとだきつく。顔が無い以上、そうでもしないと感謝の気持ちを表現できない。
「とにかく、復讐に手を貸すって約束しちゃったんだから、協力しなきゃね。
 ま、上手くいけば真紀を片付けられるわけだし、失敗してもあたしらに被害はないだろうし、やるだけやらせようよ」


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