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放課後の吸血鬼

5妖怪に化かされた名無しさん:2005/05/31(火) 23:03:51
哲晴が忘れ物を取りに戻った夕暮れの教室に、彼女はいた。
彼が教室に入ってまず気付いたのが、血塗れで倒れているクラスメイトの長谷川浩子だった。ギョッとしてあとずさった彼が、ふと人の気配を感じてそちらを向くと、もう一方の戸の所に、彼女が立っていた。
哲晴は、はっと息を呑んだ。
スラリとした長身に、セーラー服の襟を超えて背中まで届く、黒曜石の髪。整った卵型の顔に、雪の肌。鼻筋の通った、鼻梁の小柄な高い鼻。
意思の強そうな真っ直ぐな眉の下の猫科の獣を思わせる吊りあがり気味の目には、キラキラと輝く紅玉の瞳。小さめの口には、つやつやとした林檎の唇。
僅かに開いたそこからは、ニュッと突き出た白銀の牙。胸元まで挙げられた手のほっそりとした指に、長く鋭い真珠色の爪。
はっとする程美しく、ぞっとする程恐ろしい。
あきらかに人ではないそれを、哲晴は叫ぶことすら忘れて、ただただ見つめていた。
白銀の牙をちょこんと覗かせた、血に濡れたような唇が、笑いの形になった。誘うように、淫らに。
そして瞳をらんらんと血色に輝かせ、彼女はゆっくりとこちらへ近づいてきた。
哲晴はジンと頭の芯が痺れたようになって、その美しく恐ろしい者が、コツリコツリと歩み寄るのを、ただただ見つめていた。
心臓が、胸に手を当てる必要もないくらいはっきりと時を刻む。
彼女は哲晴の真正面に立つと、無造作にスッと右手を伸ばした。
鋭い爪の生えた白魚のような指が、ゆるりと哲晴の首筋を撫で、肩に置かれる。
逃げたい。このまま大声で助けを呼び、走り出してしまいたい。
しかし、襲いくる恐怖の中に、ポツンと染みのような別の感情があるのを自覚していた。
それは期待。この少女の口付けを首筋に貰えるのではないか、そんな期待だ。
でもそれは、彼女の餌食になるという事だ。
吸血少女は微笑むようにスウッと目を細めると、哲晴の両肩に手を掛け、ぐっともたれかかる。
魔性の者と接しているのに、ゾゾッと哲晴の背中を走り抜けたのは戦慄ではない。劣情だ。
そのまま体重を掛けられて、ドシンと尻餅をついて床に大の字に倒れる。


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