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放課後の吸血鬼

4336:2005/06/01(水) 00:26:15
ポーンとゴム毬が弾む音がして、はっと現実に引き戻される。
目を開けると既に日は沈み、西の山の向こうを微かに血色に染めるのみ。代わりに世界を支配するのは闇。東の空からは真円に足りぬ月が冷たい光を投げかけている。約束の刻限のようだ。
台からムクリと起き上がり、人の姿をとることにする。月に照らされた巨大な蜘蛛の影がギュウッと縮まる。
蜘蛛の腹部が、その胸部にスウッと収納され、縊れた腰の下は白く膨らんだお尻に変わる。それに伴って左右三本ずつの足が一つに合わさり、縞模様の外骨格から白くふっくらとした肉付きの内骨格のそれに変わる。
アミの姿にすでに蜘蛛の面影はまったくなく、どこから見ても人間の女のそれだ。
瞬時に糸を編んで即席の着物を作ると、サッとそれを身に着ける。浴衣に似たそれは、赤地に手毬等の絵柄の派手な着物だ。
再びポム、ポムとゴム毬が弾む音がする。
音のした方向をひょいと見ると、巣を支える糸の一端の傍に、闇の中からスウッと小柄な人影が浮かび上がる。
「今晩は」
幼い声でそう声をかけたのは、赤いスカートに白いブラウス、ピンクの可愛い運動靴の少女。年の頃は十歳程か。
その顔は、黒々とした闇に溶け込んで見えない。否、闇を見通すアミの目には、そこが空っぽなのが解る。
続いて、パシャッと水音がして、少女の後にもう少し大きな人影が現れる。
背中まで届く長い髪から、ポタポタと水を滴らせる、紺色のスクール水着の少女。うつむき加減の顔には、無気力な半開きの瞼とぼんやりとした虚無色の瞳。軽く閉じられた口には、何の感情も浮かべない。
膨らんだ胸に張り付いたゼッケンの文字は、美奈萌と読み取れる。
裸足のまま、ペタペタと首無し少女に歩み寄り、その背後にピタッとくっつき軽く腕を回して抱きつく。
「“黄昏学園”より、首無しの真理華と、プールの美奈萌(みなも)、ご協力の為に参上いたしました」
真理華はどこからか幼い声を出して慇懃にそう名乗り、ぺこりと一礼した。


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