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放課後の吸血鬼

2216:2005/05/31(火) 23:39:57
大日向は、人が見てないかどうか、キョロリと周囲に目配せする。そして、姿を変えた。
猫を思わせる釣り目が、虎を思わせる凶悪さを持ち、瞳が血色に染まる。爪がスラリと伸び、角質から真珠の光沢を放つ骨質へと変化する。桜色の唇が血色に染まり、そこからちょこんと鋭い牙が覗く。
哲晴は、声も出ないまま、暫くの間ただただ見つめる。
「どう?」
じっと見つめられ続けるのが息苦しくて、沈黙を打ち破る為に、大日向は聞いた。
「ん、ああ…、綺麗だ」
「な、何を言い出すんだ。いきなり」
ポツリと漏れた哲晴の本音に、目を白黒させてそう返す大日向の頬は、ほんのりと薔薇色に染まっていた。
「ご、ごめん。でも、本当にそう思ったから」
哲晴もサッと頬を赤らめる。
コーヒーを一口すすって落ちつきを取り戻すと、彼女はスッと、テーブルの上に鋭い爪の生えた手をかざす。
「ね、見て」
影が、ない。すっかり日が陰り、鏡となった窓にも彼女の姿は映らなくなっていた。
「“あり得ないもの”だろ?」
そう言い終わると、スウッと窓の鏡に、寂しげな普通の少女が戻ってきた。
「鏡に映らないってことは、ひょっとして大日向さんは、その…吸血鬼、なのか」
「そう」
目を伏せて答え、それから哲晴の心を察してか、付け加える。
「あ、でも安心して。ボクは人間の血は吸わないよ」
まるでそれを証明するかのように、コーヒーを一口啜る。
「それから、ボクの事は“真紀”でいいよ。さん付けもいらない。できれば呼び捨てにしてよ」
そしてふと思い出したように尋ねた。
「そう言えば、キミの名前はまだ聞いてなかったよね。良かったら、教えてくれない?」
一瞬、名前を教えて良いものか迷ったが、そもそも面も素性も割れてることに気付いた。
「中沢哲晴。哲学の哲に晴れるで“哲晴”」
「ありがと」
微かに、真紀の表情が緩んだ気がした。


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