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放課後の吸血鬼

2115:2005/05/31(火) 23:37:58
そのファミレスは、学校からは駅を越えた側に位置する。駅のこちら側にも、ファーストフードや喫茶店があるので、生徒はそこまで来る事は滅多にない。
そろそろ日が沈みかける頃、哲晴はファミレスについた。夕食には時刻は早いせいで、まだ客はまばらだった。
大日向は、店の表通りから離れた奥の席、駐車場の見える窓際にいた。哲晴と目が合うと、大日向は小さく手を振った。その表情は硬い。
哲晴が無言のまま席につくと、彼女は先に頼んでいたサンドイッチとコーヒーを摂っているところだった。
すぐにウェートレスが、水とメニューを持ってくる。
「ご注文がお決まりでしたら…」
「これと同じものを」
表情を固くしたまま、大日向がぶっきらぼうに伝えた。続けて哲晴に、おごるから、と付け加える。
大日向はコーヒーを啜りながら窓の外を眺め、哲晴はじっと黙ったままだった。やがてウェートレスコーヒーとサンドイッチを置いて下がってから、ようやく哲晴は口を開いた。
「一体…、アレは、何なんだ」
大日向は飲んでいたコーヒーカップを、コトリと置くと哲晴をじっと見つめた。
「ごめん。悪いけど、大きな声を出さないで欲しいな。折角、人に話を聞かれない場所を選んだ意味がなくなる」
押し殺した声で告げ、そして一息置いて続ける。
「妖怪、だよ」
「妖…怪?」
「お化け、バケモノ、あやかし…、そう呼ばれているものだよ」
「そんな…、まさか…。本当に…いるなんて」
彼女は、ザックリと傷のついた鞄を指差し一言。
「証拠」
鞄の傷を見ていると、さっきの恐怖がまざまざと蘇り、ゾッとしてくる。
「…それとも、自分の目で見た事を、信じられないかな?」
そう、続けた。哲晴はプルプルと首を振って否定する。
「でも、そうなると、大日向さんも…その…」
大日向は、サッと一瞬伏目がちになって答える。
「そう、ボクも…妖怪だよ。一昨日、見ただろ」
夢で見たのと違って、そう答える姿は寂しげだ。
「なんか、実感湧かないな。目の前のにいるのが、その…、妖怪だなんて」
哲晴の顔に浮かぶのは、疑問とも不信ともつかぬ曖昧な表情。
「そうか…。じゃあ…。…大声は出さないでよ」


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