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放課後の吸血鬼

2014:2005/05/31(火) 23:36:24
「逃がしたか…」
仕方なしに追跡を諦めて、ピシャッと窓を閉じる。
そこで真紀は、倒れている凸凹コンビに気付く。急いで口元に耳を近づけて息を確認する。幸いにも、昨日の野上と同じくすやすやと眠っているだけだ。
ほっと息を吐くと、次いで廊下で倒れている目撃者の少年へと向かった。

蜘蛛女を追ってダッと教室へ飛び込んだ大日向が、戻ってきた。首の動く範囲でなんとか振り向いて見える所まで、コツコツと歩み寄る。
紅玉の瞳、雪の肌、林檎色の唇、白銀の牙、真珠色の鋭く伸びた爪。救いの女神は夢で見たのと寸分たがわぬ、紛れもなく人外の容姿をしている。
驚きの連続で声も出ない哲晴の傍に屈むと、大日向はヒュッと爪を一閃させて糸を切り裂く。切り裂かれた糸は、見る間にポロポロと崩れ塵となって消え去り、哲晴を開放する。
すると、スウッと見る間に大日向の人外の要素が消えていく、まるで幻のように。瞳は黒に、頬は肌色に、唇は桜色に、牙は消え、爪は短くピンクに。そこにいるのは、学食で見たごく当たり前の少女だ。
「あ…、あれは…、一体…?」
なんとか回った舌で問いかける哲晴に、大日向は口にスッと人差し指を当てて、それを制する。
「早くこの場を離れよう。またあれが来たら危ないから。
 それから、あの二人なら大丈夫だよ。昨日の人と同じで、寝ているだけだから」
置き上がる哲晴に背中を向け、大日向は続けた。
「それから…、もし、何が起きてるのか知りたければ…、キミに、知る覚悟が…、これ以上深く関わる覚悟があるならだけど…」
彼女は、駅前のファミレスを指定して、そこで待つと告げて足早に立ち去った。
寝ている二人は、二三度ユサユサと揺すると目が覚めた。昨日の野上と一緒で、特に身体に変調を感じていないようだった。安堵して、哲晴は二人に下校を促した。
三人で校門を出たところで、横口が口を開く。
「今日はどうする? ゲーセンでも寄るか?」
「あ、悪い。今日、用事があったんだ」
それまで寡黙だった哲晴は、二人にそう告げて別方向に向かった。指定されたファミレスに行く為に。


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