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放課後の吸血鬼

1812:2005/05/31(火) 23:31:22
よし。このまま引き離して、なんとか逃げ切れれば…、心の中でそう呟いて、哲晴はダッシュで廊下を逃げだした。
もうすぐ階段だ。追ってくる足音はしない。が、代わりに、ヒュッと空を切って何かがビシャリと背中に叩きつけられ、そのまま彼を押し倒した。
ドサッとうつ伏せに倒れた哲晴の、背中から床にかけてベッタリと貼りついているのは、ねばっとした白いもの。そう、相手は蜘蛛なのだった。
「はぁい。残念でした。追いかけっこは、お・わ・りっ」
事実上の死刑の宣告を、軽く言い放つ。
「だーいじょうぶよ。死ぬ前に、お姉ぇさんが、たぁっぷりと楽しませてあげるから」
どぎついピンクの台詞とともに、背後から、カシャ、カシャとゆっくりと蜘蛛の足が近づく音がする。さながら、死刑執行までの時を刻む秒針の様に。
見えないせいで、却ってその一歩ごとに、哲晴の中で恐怖と嫌悪がぐんぐんと膨れ上がる。
「待っててね、ボウヤ」
くすくすと、誘うような淫らな声。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。あんな化け物に、あんな魔物に、あんな怪物に殺されるなんて。
倒れた時に打った手や胸がジンと痛いから、これまでみたいな夢ではない。夢の中の痺れた頭と違って、覚醒時の脳は現実的だ。心の中を占めるのは、ただ恐怖。
と、傍の階段を駆け上ってくる、タッタッという軽やかな足音がした。そして長い髪をなびかせながら姿をあらわしたのは、真紅の瞳の少女だった。


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