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優しい死神の事件簿

1妖怪に化かされた名無しさん:2002/11/30(土) 02:31
登場人物(1):狩矢 早馬(カリヤソウマ)
 主人公。ネットワーク「訪問介護死団」に所属する”死神”。
 死に逝く者に安らかな死を与え、理不尽な死を撒き散らすものには断罪の鎌を振るう。
 かつては「刈り取る者」と呼ばれる、容赦なく死を与える死神の集団に所属し「極黒の翼」と恐れられる存在だったが、優しい心故に仕事に耐えられず今のネットワークに移って来た。
 外見は”衣裳”として髑髏を模した仮面と漆黒のマント、採魂の鎌を持つ以外は人間とほぼ変わらない。
 表向きの仕事は医療機器の営業で、毎日病院を回ってターゲットを探している。
 ”影潜み”で病室や医局に忍び込んでカルテを盗み読んだり(ドイツ語必須)、”無生物との会話/医療機器限定”で情報収集する。ただ、必要な情報が得られることは少なく、大抵は愚痴を聞かされてばかり。
  「今度内科に入ったインターン、全然使えねーよ」
  「看護婦の○○美ちゃんは頑張り屋さんでいい子よねぇ。それに比べて××恵さんは〜」
    (対象の知性を一時的に引き上げる特別増強)
 最近のカルテはオンライン化されているので、”磁気感知””電気信号感知””拡大視覚”の3点セットをとる必要に迫られ、バロウズのコンピュータ学科に通っています。

2妖怪に化かされた名無しさん:2002/11/30(土) 02:33
事件FILE.01
 今回のターゲットは病気の為に長期入院している少女。営業回りのついでを装って接触する。医療機器の話では、もう1年ももたないと言う。徐々に衰弱していく少女をもどかしい想いを抱えながら見守り続ける早馬。だがある日、見慣れない見舞いが来た日から急激に快復し始め、担当医がパニックになる中、完治して退院していく。驚きと不審と、少しの喜びを込めて少女を見送る死神。
 時期を同じくして各地の病院で突如、難病が完治する少年少女が現れ出す。カルテを調べても、医療機器に聞いても完治していることに間違いは無い。善意の妖怪の仕業なのだろうか。縄張りを荒らされたことよりも少女が助かったことを喜んでいた死神だったが…。
 突然事件は急展開。完治して自宅へ帰ったはずの子供達が次々に姿を消していったのだ。慌てて少女の家に行くと、怪しい男達に連れられて行く少女の姿が。男を問い詰めると、人間の姿を捨てて襲い掛かってくる。その正体は”天使”。その口から、子供たちにに力を与えて少年十字軍を結成し妖怪たちと戦う尖兵とする、卑劣な企みが語られる。
 死神と天使の戦い。数の差をものともせずに天使を打ち倒していくが、助け出した筈の少女自身が振るう剣を受けて深手を負う。
 能面の様な無表情で剣を振るう少女。だがその瞳から零れる涙を見て完全に支配されていないことを悟った死神は必ず助けることを誓ってその場を脱する。
 行方不明の子供達が、とある聖堂に集められていることを突き止め再戦を挑む。
 死を与えることを止めた時に自ら封じた採魂の鎌を携えて。

3妖怪に化かされた名無しさん:2002/11/30(土) 22:33
設定集その1
採魂の鎌:
 武器の手/大鎌を包む黒い炎。(闇+熱)属性、打撃のみ、ダメージ持続、徹甲でカスタマイズ。
  死神の最大の技だが、死を与えることをやめたときに封印した。
断罪の鎌:
 闇属性、武器形態(投げられる)、気絶攻撃、”白日夢”と連動。
  採魂の鎌を封印した時に替わりに身につけた技。悪人を殺すことなく倒し、犯した罪を追体験させて裁きを与える。

4妖怪に化かされた名無しさん:2002/12/01(日) 03:57
敵データ
馬鹿一の死神
「この戦いが終わったら婚約者と幸せに暮らす」「戦場にいる兵士が、電話で息子の誕生日を祝う」など、特定の「キーワード」を満たした者の命を、事故に見せかけて狩る。

魂を狩らない死神
自殺した者の魂を強制的に肉体に戻し、さらなる苦しみを与える。

幸福をもたらす死神
事故死や病死などが確定した人間に幸福を与え、死の苦しみを倍化させる死神

5妖怪に化かされた名無しさん:2002/12/02(月) 00:07
事件FILE.01−2

深夜の聖堂、乗り込んだ死神を迎えるのは”少年十字軍”となった子供達。天使に与えられた光の槍を構えて襲ってくる。
人間を傷付けることを嫌う者が多い妖怪相手には効果的な策だっただろう。だが殺さず無力化する技を持つ死神の前にはただの雑兵。断罪の鎌を振るって次々に打ち倒していく。
絶望とされた我が子の快復を喜ぶ両親の涙、笑顔で迎える友人たちの姿を見せて洗脳を破っていく。

そして最後に姿を現す少女、楓。他の子供達より遥かに強い輝きを放つ鎧と剣を携えている。
病に倒れる前は国体にも出場した腕前の剣術に押される。虚を突いて投げた鎌も背中から生えた光の翼に落とされる。
闇を纏う鎌と、光り輝く剣が幾度となく交差する。死神の仮面を剣がかすめる。割れ落ちた仮面の下から覗く早馬の素顔。楓の顔に初めて動揺が浮かび動きが止まる。 
その隙を逃さず断罪の鎌を振りかぶり、ありったけの想いをぶつける。

 病院のロビーで一緒にテレビを見たこと。時代劇が好きだと恥ずかしそうに話してくれた楓。
 中庭で子供達の遊び相手になったこと。不器用に子供をあやす自分を可笑しそうに笑っていた楓。
 早く退院して剣道の練習に戻りたいと言っていた楓。
 日に日に衰えていく体に淋しそうにしていた楓。
 「もう駄目なのかな…」と涙をこぼした楓。

瞳に光が戻り、その口から小さな呟きが漏れる。
 「早馬さん…」
死神の胸に崩れ落ち、気を失う楓。その体を静かに横たえ振り返った死神の前に現れる天使。
 「ふん、しょせんは下賎な人間か。デーモンの一匹も始末できないとはな。」

6妖怪に化かされた名無しさん:2002/12/03(火) 02:04
事件FILE.01−3

 「子供たちの命を弄ぶのがお前たち天使のやり方かっ!」
 「我らが偉大なる神はデーモンの抹殺を望まれている。その為に働けるんだ奴らも本望だろう。どうせすぐに消えてしまう命だ、有意義に使ってやるのが神の愛というものだろう。」
 「子を失う親の悲しみがっ、絶望視された子供が助かった親の喜びがっ、その子供を再び失った絶望がわからないのかっ。それがわからない奴に”愛”を語る資格はない!」

天使アズラエルの剣が、楓との戦いで消耗した死神に襲い掛かる。右腕の傷が鎌の動きを鈍らせる。距離を取って投げ付けた鎌も、生み出された突風に阻まれる。
 「ちっぽけな島国の死神風情にしてはよくやったが、どうやらここまでのようだな。」
悠々と近付いてくる天使アズラエル。その時、死神の背後で閃光が生まれる。目を押えてもがき苦しむアズラエル。
 「いま治しますから。」
そんな声と共に右腕が温かい光に包まれ傷が癒される。
 「早馬さんごめんなさい、こんな酷いことしちゃって。」
 「君が気にすることはない。全ては奴らの企んだことだ。」
ようやく立ち直ったアズラエルに二人は立ち向かっていく。

7妖怪に化かされた名無しさん:2002/12/04(水) 01:56
登場人物(2):篠宮 楓/聖天使ジャンヌ・ダルク
 天使アズラエルの少年十字軍計画によって”変容”させられた少女。難病を患い入院したときに死神/狩矢 早馬と出会う。1年もたないと言われたが天使の力で癒され操られる。
 剣道が得意で、国体に出場したほどの腕前。時代劇が大好き。
 事件後も人間に戻ることはできず、死神と共に人間に戻る方法を探している。あまり見込みはないのだが、最近では死神と一緒に生きていくのもイイかな、と思い始めている。
 両親は既に亡く、女医の姉と二人暮し。姉には”変容”してしまったことは既にばれている(検査の時にばれた)
 外見は、銀色の鎧に剣、光の翼(翼での飛行と受動防御に必要)。高い防御力と機動力を誇る。
 最大の武器は”武器の手”から発する光の剣(エネルギー=光:切り+非実体にも影響+打撃のみ)
 神の威光を宣伝する為に”治癒”と”生体修復”の妖術を与えられている。その他にも”閃光”や”障壁”など。

8妖怪に化かされた名無しさん:2003/01/07(火) 20:22
事件FILE.02
深夜の交通事故の発生が急増。
更に各地の病院に搬送された患者の一部が、ふと目を離した隙に消えるという怪談が広がり始める。
営業回りの病院で噂を聞いた死神は調査を始める。

調査結果:
事故原因は、走行中にタイヤが突如破裂する、前触れなく強烈な眠気に襲われる、の2点が圧倒的に多い。
消える患者は、その怪我が手足に限られるという共通点がある(歩けない程の怪我でも)。内臓に損傷を受けた患者が消えたという事例はない。
見慣れない医師が治療に当たったとの医療機器からの証言。
だが居合わせた他の医師や看護婦は、そんな医師がいたことも憶えていない。

事件の裏で暗躍する、妖怪”臓器ブローカー”とのバトルで締め。

9妖怪に化かされた名無しさん:2003/01/07(火) 20:25
敵データ

妖怪”臓器ブローカー”
<鉤爪>+<毒分泌>:指先がメスに変化。
<実体=一般 +刺し+ピンポイント>:メスを投げる。これでタイヤを切り裂く。
<誘眠>:運転中のドライバーを眠らせる。
<分解>:臓器を抜き取る
<記憶操作>

10妖怪に化かされた名無しさん:2003/09/26(金) 17:15
事件FILE03
ある日の朝、寝坊してしまい慌てて学校へ向かう篠宮楓、そこに現れた一人の少年。
「篠宮楓…だよな?」
「え、ええそうですけど…?」なぜか自分の名前を知ってる少年に警戒し、後ずさる楓。
「お前も同類なんだろ?ちょっと力見せてくれよ」
気がつくと、あたりに人の姿は見えない、人払いの術か。
「あなたは…」問い掛ける楓。
「わりいが自己紹介は後回しだ。チンタラしてるとあの死神が来ちまうからなあ」
そう言って青年が軽く腕を振ると、虚空から現れた何本もの釘が楓めがけて飛んでいく。とっさに障壁で防ぐ楓。

そのころ狩矢早馬は、同じく人払いの空間で黒い全身タイツに身を包んだ男どもと交戦していた。
「こいつら、一体何者なんだ!?」
その様子を眺める一人の少年。顔に笑みを浮かべながら早馬の闘いぶりを眺めている。
「極黒の翼か…噂に違わぬ強さだ。しかしなぜ採魂の鎌を使わないのか…?」

二人の少年の目的とは一体?

11妖怪に化かされた名無しさん:2003/09/29(月) 13:17
事件ファイル03(2)
あらかた黒いタイツの男どもをかたづけた死神、その前に先程から様子を見ていた少年が姿を見せる。
「こんにちは、狩矢君。僕の名は」自己紹介をさえぎる突然の轟音。天空からすさまじい音を伴って着陸したのは一人の少女。
ただしその全身は機械と青いボディスーツに覆われ、かろうじて体のラインで少女と判別できるというところ。
「今度こそ逃がさないよ、ドクター!」快活そうな声を響かせる少女。
「やあ、テレサ君。ひさしぶりだな。」
あくまで笑みを崩さない少年。
「ところで、どうやってこの空間へ?ここは僕の力で隔離した空間のはずだが」
「簡単よ。こないだようやく完成した発明のおかげ。ひょっとして、私じゃ作れないとでも思ってた?」
「そうだな、君の技術をあなどっていたのは事実だ」肩をすくめる少年。そして一人展開に取り残された死神。
「ここは一旦引かせてもらうよ。元々僕の目的は足止めなのでね」
そう言うと、彼は近くの影に吸い込まれるかのように姿を消した。
「影の門か…、あいかわらず逃げは上手ね」そう言って、ため息を一つ。
とりあえず危機は去ったと感じ、少女に問い掛ける早馬。
「君は…それに、今の奴は一体…」
「話は後。早く急がないと君のパートナーが危ない」
二人は篠宮楓の自宅へと全速力で向かうが、すでに楓の姿はどこにもなかった…

12妖怪に化かされた名無しさん:2003/09/29(月) 13:57
事件ファイル03(3)
楓を守れなかったことで自らを責める早馬。そんな彼に少女は事情を語り出す。
彼女の名はテレサ。元々は人間の少女、八柱みさきだったが、交通事故にあいほぼ即死に近い状態だったところ、
その場に居合わせたドクター―悪の科学者に対する子供たちの不安や恐怖から生まれた存在、奈落博士―の手によって、
改造人間テレサとして生まれ変わった。
しかし洗脳される前に、ある妖怪たちに救出されて今にいたるのだという。
「ナインスタインズって言うんだけど、知ってる?」
「いや、悪いけどよくは知らないな。“バロウズ”の上のメンバーなら知ってるかもしれないが…ってそんなことより、早く楓を!」
焦る早馬。その時、テレサの元にナインスタインズからの連絡がくる。どうやら楓を拉致した連中は町外れの廃病院へ向かったらしい。

そして数分後。廃病院の前に立つ二人。
テレサの発明した、簡易式空間制御装置によって隠れ里への道をこじ開け、奥へと進入する。
そこはまるで、特撮ものに出てくる悪の秘密結社のアジトを彷彿とさせる場所だった。
襲い掛かる全身タイツの男ども―戦闘員―をテレサの仲間達にまかせ、楓を探す二人。
そしてついに目的の場所へたどり着く。

しかし、その部屋の前には、楓をさらったあの少年が立ちふさがった。
「さあて、最終ボス戦といこうじゃねえか」

13妖怪に化かされた名無しさん:2003/10/07(火) 16:17
味方データ
八柱みさき:改造人間テレサ 17歳の高校2年生
交通事故で即死に近い重傷を負うが、ドクターの実験によって妖怪改造人間として再び
息を吹き返す。その後洗脳されかかるものの、以前よりドクターの所属しているネットワークと敵対していた
ナインスタインズによって偶然救出される。
馬鹿がつくほどの科学好き、おそらくは両親(共に科学者)の影響かと思われる。ちなみにアザラシ好き。
容姿はクールな眼鏡っ子、妖怪時は体にフィットした青いスーツに、頭部と胸、両ひじ両ひざから下にかけての銀色のアーマー。
特殊装備(電撃放出装置/エネルギー・電気、飛行装置/翼による飛行、センサー/オーラ感知、等)を駆使して活躍する。
また、脳改造の影響で手に入れた特徴/超発明家を使って新発明の開発を行う(資金はナインスタインズもち)。

14妖怪に化かされた名無しさん:2003/10/10(金) 13:47
事件ファイル03(4)
「どうして彼女を…楓をさらった?お前たちの目的は一体なんなんだ!」問い詰める死神。
しかし、少年はその質問には答えない。
「どうだっていいだろそんなの。お前たちの目的はあの女を救い出すこと、俺の役目は
お前たちを通さないこと。それだけさ」
その言葉が終わるや否や、少年の姿が変化していく。
頭に茨の冠、手と足の甲、そして脇腹には血を滴らせる傷、服は純白の衣。
頭上には楓のそれと同じ、光輪が燦然と輝いている。その姿を見て驚く2人。

「驚いたかな?」
ドクターの問いかけに、楓は答えなかった―いや、答えることができなかった。
まさか、そんな…でもあの姿はどう見ても…
そんな彼女の心中を察したかのように、いつもの笑みを浮かべながらドクターは言葉を続ける。
「君と同じだよ、彼は。もっとも君の場合は天使アズラエルによる"変容"であり、彼―榊光矢―は僕の
実験によるものだが」平然と告げるドクター。
「救世主・イエス…闇に住まう者どもにとって、まさに最後の敵にふさわしいとは思わないか?」
「………」
イエスの妖術によって指一本動かすこともできない楓。唯一できることは沈黙のみ。

一方、テレサの仲間たちは特に大きな犠牲もなく戦闘員たちを全滅させていた。
「こっちはあらかた片付いた、あとはドクターだけだ」白い虎の言葉にほかのメンバーもうなずく。
「そうはいかん」
奥の扉から、まがまがしい威圧感を伴ったドス黒い甲冑が姿を見せる。
「…なんで俺が…早く新刊見たいのにブツブツ…面倒…横になりたい…」
もう一人の姿は無く、絶えず何かをつぶやいている神経質そうな声のみが響く。
「今回は楽だと思ったんだけどなー、やっぱ世の中甘くないか」
白虎の横で、炎に包まれた男がぼやいた。
「軽口たたくのは後にしな、煉!」美しい毛並みの狐がハスキーな声で叱咤する。
「テレサ…あんたはまだ若い、生き急ぐんじゃないよ」

15妖怪に化かされた名無しさん:2003/10/10(金) 18:58
事件ファイル05(5)
動けない楓に対して、ドクターは事の経緯を語り出していく。
今回の計画は、楓を拉致した後その体を調べ上げ"変容"のメカニズムを解明する、というのが
目的だった。
戦闘員や怪人に続く戦力になることを期待してのプランだったが、思わぬ狂いが生じた。
因縁浅からぬ、テレサたちナインスタインズの面々による介入である。なぜバレたのか?
「どこにでも足の引っ張り合いはある」自嘲気味に笑うドクター。
そう、ナインスタインズに情報を流し、ドクターとの共倒れを狙った者が味方にいたのだ。
ジェネラル―悪の変身超人デスブラスト―
「彼も最近、宿敵に遅れを取っているからな。自分の地位を脅かすものは許せないということか」
しかも、護衛と称して監視役(甲冑・神経質)をつけるという念の入りよう。ジェネラルにしてみればドクターに
貸しを作る機会でもあるのだろう。
だが、すでに楓の身体データは自分の手に入った。"変容"の解明には少々時間がかかるがいずれは
実用のメドもたつはずだ、そう語るドクター。
「数多くの失敗作の上に成り立つ芸術品よりも、コストパフォーマンスのいい汎用品のほうが兵士としては便利だからな」
饒舌なマッドサイエンティスト、おそらくは誰かに話したくてたまらなかったのだろう。
(隠し事のできないタイプね…)楓はそう思った。

「全くしぶといねえ、おたくら」イエスの嘲る声。
2人は重傷まではいかないまでも、体のいたるところに大小無数の傷を作っていた。
妖術を吸収する衣のせいでテレサの電撃や早馬の断罪の鎌も効果がなく、物理攻撃もさほどの効果を得ない。
しかも、イエスの体はすさまじい速度で回復を行っている。これではジリ貧だ。
「うああっ!」
避け切れなかった釘が、テレサの体に深々と突き刺さった。
「ほらほら、逃げまといな…ん?」偽救世主の目に早馬の姿が移る。
傷だらけの死神の腕に握られていたのは、漆黒の炎に包まれた一振りの鎌。
「それが切り札ってことかい?でも残念。妖術である以上、その炎でも俺の衣は焼けないぜ」
邪悪な笑みを浮かべるイエス、だがその笑いが凍りつく。
絶対零度のごとき視線を投げかける死神によって。
「お前の行く先は神の御許じゃない、地獄の底だっ!!」

16妖怪に化かされた名無しさん:2003/10/12(日) 23:29
事件ファイル05(6)
死神の一撃をまともに受けるイエス。今や、とっさにガードしようと上げた左腕や光の衣など、早馬の怒りと採魂の鎌の前では無力に過ぎなかった。
その強力な再生能力も、煉獄のごとき黒炎の前ではもはや何の意味もなさない。
「…なんてこったい、この俺が…信じられねえ…」
その言葉を最後に、邪悪な聖者はこと切れた。

「死んだか」
そういって、大きく嘆息するドクター。だが焦りの色は見られない。まもなく2人がここに来るというのに。
「まあ良かろう。僕の頭脳とこれまで蓄積したデータがあれば、彼の代わりなどどうとでもなる。
危険人物を始末できなかったのは残念だが、それは次の機会に持ち越すとしよう」
「あなたに次なんてない」
その声は、ドクターの背後から聞こえた。
振り向くドクターの前に立つのは、銀の鎧を纏った気高き少女。
篠宮楓―聖天使ジャンヌ・ダルク―
「…そうか、奴の死で妖術が解けたのか」
「学者さんにしては、意外とぬけているんですね」
「返す言葉がないな。…だが、ここで君を片付ければいいことだ。念のために、この部屋へつながる
通路の空間を伸ばしておいたのでね。彼らが来るまで時間はある」
ドクターの姿が、少年から人外の存在―黒い触手の生えた塊―へと変化していく。
「ひ弱なモルモットの分際で、この僕を侮辱したことを後悔するがいいわ!」塊の中心にある口から、凄まじい勢いでガスが楓に噴射された。
しかし、楓の発した障壁がいともたやすく濁ったガスを防ぐ。
「はあ!?」
間の抜けた声を上げ、あっけにとられるドクターの頭上―らしきところ―に、楓が光の剣を振り下ろす。
その一撃で、ドクターは断末魔の叫びをあげる間もなく消滅した。
「…あなたが思っていたよりも、私のほうが強かったみたいですね」
そう言ってみたものの、楓の心は沈んでいた。
自分のせいで早馬をまた危険な目にあわせたこと、そして敵とはいえ、一つの命を断ったことへの後悔―
そんなことを、とりとめもなく考えていたその時、正面の扉が勢いよく開いた。

17妖怪に化かされた名無しさん:2003/10/15(水) 11:53
事件ファイル03(7)
「早馬さん!」
扉から姿を見せたのは早馬とテレサの2人だった。崩壊していくドクターの死体に一瞥するテレサと死神。
「すまない。こいつらの企みに気づかないばかりか、君を危険な目に合わせて…」
「いいんです。むしろ謝るのは私のほう。また早馬さんに迷惑をかけてしまってごめんなさい」
「悪いけど話は後にしたほうがいいみたいよ」そう告げるテレサ。
ドクターの死によって、捻じ曲げられていた空間が本来のそれに戻ろうとしているのか、回りの壁がひび割れていく。

「ドクターは敗れたようだな。…戻るぞ、インビジブル」
黒い甲冑の呼びかけに応じたのか、2つの気配が遠ざかっていく。
「あいつら、何とかやったみたいだな」
「らしいね。それじゃ、あたしたちも脱出しようか」そう言って、金色の狐は入り口へとその身を翻した。

「とりあえず、一段落ついたみたいね。できればドクターはあたしの手でカタをつけたかったんだけど…まあいいわ」
「借りを作ってしまったな」
ようやく笑みを浮かべる早馬。
「気にしなくていいよ。必要になったらちゃんと返してもらうから。じゃあね、あとは2人でごゆっくり」
去っていくテレサとナインスタインズの面々を見送る早馬と楓。
「行こうか」
「そうですね。お姉ちゃんが心配してるだろうし、早く帰らないと」
陽気な口調で、早馬に向かって笑みを見せる楓。
そして2人は廃病院を後にしたのだった。


「全く、俺が殺されるとはな、たいした奴だぜ。でもよ、完全に俺の体を壊さなかったのは甘いぜ」
…2人が去っていく方向を眺め、そう呟く一人の少年。
「ドクター、あんたの残したデータ、俺がありがたく頂戴しとくよ」
ポンポンと、ディスクの入ったカバンを軽く叩く少年。
「"獣"かそれともF博士か…どこが高く買ってくれるかな?」


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