したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

444毛玉の怪 ◆pGG800glzo:2009/06/20(土) 00:22:19
(26)
更に少年は太子の言葉を代弁するごとく群衆を見回し、告げた。
「ここにいるそなたらにも聞いて欲しい。我々は高麗の太子の一行である。
間もなくこの国で冬を迎えるに当たり、太子は貴人が身につけるに相応しい
皮衣を探しておられる。色は白。既になめしてある物でも、
そのような毛皮を取れそうな生きた獣でも良い。何処ぞの寺や貴族の宝物蔵に
そうした毛皮が眠っているという噂でも良い。有益な情報を持ってきた者には
褒美をつかわすゆえ、七条大路の鴻盧館まで知らせに来るように」
大波のように、興奮気味のざわめきが見物人の間に広がる。
たった今彼らの目の前で太子が少女に与えた品の見事さが、
その興奮に拍車をかけていることは明らかだった。

――なんだなんだ?この雰囲気はよ。
突如として市を支配した異様な空気に、加賀は顔をしかめる。
確かに太子は一人の少女に温情をかけ、その命を救った。
そればかりか彼女に見事な品々まで与えて寛大さを示した。
しかし視線を脇に転ずれば、先ほど太子に何か囁かれただけで卒倒してしまった従者が、
今も真っ青な顔で両脇を仲間に抱えられているのだ。
一方では従者をこんなにも怯えさせ、一方ではこのように巧みに人心を掌握して、
その中心にありながら平然としている太子の美貌が、加賀には薄気味悪かった。

『これで良かったのかい、永夏』
『上出来さ、秀英。さすがオレの乳兄弟だ』
浮かない顔の通訳の少年に、太子が笑いかける。
『けどあんな緩い条件で褒美を約束したら、褒美目当ての詐欺師が押し寄せるんじゃ?』
『最高の情報を釣り上げるコツは、まずどんな些細な情報にも手厚く対応することさ。
それに、寛大で気前のいい太子様と見られておくに越したことはない。
いずれオレはこの国の王にもなるんだからな。今の帝よりもオレに
この国を治められるほうがいいと、誰もが思うように今から仕込んでおくのさ』
『そう上手くいけばいいけど・・・』
太子と秀英が交わす会話の中身を、無論加賀は知る由もなかった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板