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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

443毛玉の怪 ◆pGG800glzo:2009/06/20(土) 00:21:18
(25)
『貴様!太子に向かってこんな汚い物を投げつけ、行く手を遮るとは無礼千万!』
太子の連れの従者の一人が、激昂して少女に刀を向ける。
「えっ・・・あ、ああぁっ!ご、ごめんなさい!・・・」
事態を理解した少女が目を大きく見開き、悲しみと恐怖に顔を歪ませる。
『ええい、子供だとて容赦はせん!斬り捨ててくれる!』
従者が刀を振り上げ、誰もがハッと息を飲んで目を覆った瞬間、
――まずい!
考えるより先に加賀の身体は飛び出していた。
従者の刀を、少女の命ではなく己が刀で受け止めるべく、
加賀は頭上に愛刀を真一文字にかざし持ち、襲い来るはずの斬撃を待った。

――が、それはいつまで待てどやって来なかった。
目の前では従者が刀を振りかざした体勢のまま、血の気の引いた顔で固まっていた。
刀を握り締めるその従者の手首を、背後からがっちりと片手で捉えていたのは――
永夏太子その人である。
愛撫のような囁きが太子の艶やかな唇から洩れた。
『――オレがこの国へ来た目的を忘れたのか?こんな所で悪評を立て、
オレの計画を台無しにするつもりか?・・・オマエもオレのお仕置きを味わいたいか?』
『ひっ。も、申し訳ございません!』
異国の言葉での遣り取りは加賀たちには意味が取れなかったが、
少女を斬ろうとした従者を太子がたしなめている、ように見える。
泡を吹きそうな顔で卒倒した従者が倒れ込んでくるのを優雅な身のこなしで避け、
太子が傍らにいた通訳の少年に何事か指示すると、少年は溜め息をつきつつ
荷の中から何かを取り出し、少女にそれを差し出した。
「え・・・?」
少女の脇から加賀が覗き込むと、それは一反の美しい綾絹と、
袋一杯に詰めた大粒の小豆であった。少年はこの国の言葉で告げた。
「ええと、キミ、遊び道具を壊してしまって済まなかったね。
お詫びのしるしとしてこの絹と豆を受け取ってくれるようにとの、太子の仰せだ。
これで新しい遊び道具を作るといい」
「え、これ、私がもらっていいの?わぁっ!私、こんな綺麗な布を触るの初めて!」
少女が手に取って広げた絹の華麗さに、取り巻く群衆から感嘆と羨望の声が上がる。


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