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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

440毛玉の怪 ◆pGG800glzo:2009/06/20(土) 00:18:09
(22)
明は己の顔に苦い表情が浮かぶのを止めることが出来なかった。
昨夜はその太子の気紛れに振り回されて、気の張る宴に明け方まで付き合わされたのだ。
今回、明は急病になった学問僧の代役として通訳を務めたに過ぎないのだから、
今後はもうあのような席に駆り出されることはなかろうが、
たった一晩彼の傍らに侍っただけでも酷い気疲れが今日まで残っていた。
明のそんな事情を知らない光は、幼馴染の口から外つ国の貴人の名が出たことに
純粋に驚いているようである。
「あかり、オマエいつの間に太子様と話なんかしたんだよ。ってかオマエ、
高麗の言葉なんか話せたのか?」
「あら、云わなかった?太子様はとっても気さくな方で、宮中にいらした時は
私たち女房の局にもよくお見えになるの。このお菓子だって太子様が下さったのよ。
背丈が高くて素敵だし、お顔も佐為様や明様に負けないぐらいの美丈夫だって、
女房たちの間ではもう凄い人気。太子様のお付きの中にこの国の言葉を話せる
男の子がいるから、お話する時はその子を通じてするの。
女房の噂話なんて殿方にはつまらないでしょうに、太子様はこの国のことを
学びたいからって、どんな小さなことでも真剣に聞いて下さるのよ」
「へェ、そんな気さくな人なのか。そういや加賀の話でも、
お忍びで市に出かけたりして、割と庶民的なところがある太子様みたいだったなぁ」

二人の会話を聞きながら、明には少し引っ掛かることがあった。
女房の噂話に積極的に加わったり、市まで足を運んだり――だと?
古来、女を篭絡することと、人が多く集まる市へ出向くことは、
間者などがその国の情報を収集する際の常套手段である。
昨夜宴の席で、太子がふと洩らした言葉。
――オレはその霊獣を探しにこの国へ来た・・・
そして、その霊獣の毛皮を身に纏った者は、世界の王となるべき力を手にするという。
世界の王という言葉の下に、この日の本の国をも手中に収めるという意味が
隠されているのだとしたら、彼は何かとんでもない野望を秘めて、
この国にやって来たのかもしれない。
そんな考えがふとよぎり、明は背筋を冷たいもので撫でられたような心地がした。


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