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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

437毛玉の怪 ◆pGG800glzo:2009/06/20(土) 00:15:01
(19)

「――じゃあ、昨夜は結局、その妖しを見失ってしまったって云うのかい」
「そ。オレはそん時、別の通りを巡回してたから見てねェんだけど。
直接そいつを見た検非違使仲間の話じゃ、噂どおりに馬鹿デカくって、
山猫と牛車のあいの子みてェな格好の化け物だったらしいぜ。
でさ、その化け物が一度吼え声を立てたらしいんだけど、
それが地獄の底から轟くような物凄ェ声で、それ聞いた検非違使たちはみんな
体が竦んで身動き取れなくなっちまったんだって。
それはともかく、このお菓子美味ェな。あかり、もう一個くれよ。ホラ、賀茂も」
「いや、ボクはもう十分・・・」
口元まで菓子を近づけられた明は、丁重に手をかざして辞退した。
女房部屋の一角、冬晴れの昼下がり。
陰陽寮の仕事をこなし、帝への指導碁も終えた明は、帰宅する前の一時を
友人の近衛光たちと過ごしていた。
菓子を拒まれた光は肩を竦めて、それを自らの口に放り込む。
「ンだよ、オマエが昨夜から寝てねェ、朝もほとんど食ってねェって云うから、
オレのお菓子分けてやろうと思ったのに」
「光はさっきから食べ過ぎでしょ!んもう、折角舶来物のお菓子をいただいたから
明様と光の二人にと思って出したのに、一人でほとんど食べてるじゃない!」
頭の左右で髪を二つに結わえ、残りの髪を後ろに梳き流した女房姿の美少女が
可憐な唇を尖らせる。
光の幼馴染、あかりの君である。
日頃人と打ち解けることが少ない明だが、以前強力な蛇の妖しに取り憑かれた際、
あかりの君を通してもたらされた護符に窮地を救われたせいもあって、
最近では光と共に彼女の局でくつろぐ機会も少なくなかった。
もっとも、積極的に談笑に加わる質ではない明は、光と彼女の遠慮のない掛け合いを
少し微笑みながら見ているだけ、というのが常であったが。


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