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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

429戻り花火 ◆pGG800glzo:2008/12/15(月) 23:40:13
(101)
心配そうな社を先に帰して、洗面所で顔を拭ってから部屋に戻った。
気は進まなかったが、荷物も何もかも全部あそこに置いてあるのだし、
こんな時間に外に出て行て行ったりしたら却って二人に気を遣わせるだろう。
小さな赤い電球一つに照らされた室内には、既に布団が二つ敷かれて、
三つ目の布団に社がせっせとシーツを被せているところだった。
既に敷かれた布団の片方から、見覚えのある艶やかな黒髪が覗いていることに気づいたヒカルは
それ以上歩を進めるのを一瞬躊躇ったが、社が口に人差し指を当てつつ
真ん中の布団に行くようヒカルに促したので、足音を忍ばせ、言われた通りにした。
隣の布団に恐る恐る目を遣ると、アキラは掛け布団を頭まで被って
静かな寝息を立てているようだ。
乾き切っていない濡れ髪の甘い匂いが微かに漂っているところを見ると、
ヒカルが眠りに落ちている間に一度、風呂に入って身を清めたのかもしれない。

「・・・塔矢を一人にすんのも心配やし、今夜はこーして三人で寝るのが一番いいと思ったんや。
オレたちももう寝よ」
自分の布団を設えた社が小声で言い、ヒカルも頷いた。
電気が消され、布団に潜り込む音が少しの間ガサガサと響き、静寂が訪れる。
目を閉じても眠れなかった。
社にも、眠っているアキラにも気づかれないように、
ヒカルは隣の布団からほんの端っこだけはみ出しているアキラの黒髪を眺めた。
しっとりとした匂いを放つ美しいそれに指を伸ばして触れてみたかったけれど、
今の自分にそんなことが出来るはずもない。
明日の朝を迎えれば二度とアキラに手を触れることも、
口を利くことも出来なくなってしまうかもしれない。
だからせめて今夜は目の前にあるこの黒髪を、
自分にまだ見つめることが許されているアキラの一部を、
このまま夜明けまで眠らずに眺めていようと思った。


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