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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

416小花恋唄 ◆pGG800glzo:2008/06/24(火) 21:43:32
(87)
翌日、ヒカルはあかりの家を訪れ、預けてあった包みを受け取った。
桜草の暦からすると例の下男は今日あたりアキラのいる置屋を訪れるはずで、
彼に自分の話を信じてもらうにはアキラが客を取らされている証拠の札束を見せるのが
一番手っ取り早いと思ったのだ。
直接会って話をすればアキラを救い出す糸口がきっと開ける。
それを果たすまで、己自身の将来に対する不安や焦燥はひとまず棚上げだ。
「ありがとな、あかり。助かったぜ」
「いいよ。ヒカルが困った時は、またいつでも相談してね。・・・それと」
あかりは少しきまり悪そうに、大きな目を上目遣いにして言った。
「津田さんから聞いたの。筒井さんのこと。あたしったら何も知らずに大騒ぎして、
筒井さんにもヒカルにも迷惑かけちゃって馬鹿みたい。・・・・・・御免ね」
「あー・・・、いいよ。オレも昨日知って驚いたぐれェだし」
「筒井さん、頑張って治すって津田さんに約束してくれたんだって。彼女も凄く喜んでた。
療養に行ったらしばらく会えないけど、文通しようって約束したそうよ」
「そっか。・・・・・・良かった、よな」
「うん」
筒井も加賀も、新しい生活に向けて走り出そうとしている。
自分も何かしたい。何かのために若い体と若い情熱を一心に傾けて遮二無二生きてみたい。
そうして走った先にはきっと希望の地平が広がっているように思えた。
もう一度あかりに礼を告げると、飛び出したいような心地で、
ヒカルはアキラが待つ置屋へと向かった。

三月も末の昼下がり。
町外れの置屋の古びた庭は、日が落ちるまで訪れる人とてない気だるさを漂わせつつも
松は緑に、花は綻んで、新しい命が萌え出ずる春の瑞々しい輝きをきらきらと湛えていた。
「最初に来た時は、四人だったんだよな・・・」
口の中で呟いた。あれは二月半ば、まだ冬から抜け切らない低い西陽の射す頃。
加賀と筒井と三谷と自分と、ほんの軽い冒険心でこの庭に忍び込んだ。
そこであの子供のような、甘いたどたどしい歌声が流れてきたのが全ての始まり。
軽い冒険心は淡い恋を生み、恋心はやがて相手を救いたいと願う強い気持ちに変わった。


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