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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

413小花恋唄 ◆pGG800glzo:2008/06/24(火) 21:39:14
(84)
夕闇が霧に濡れた道を薄蒼く染めていた。
一人で帰るなら心細くなってしまいそうな夕べだったが、隣で加賀が口笛を吹いている限り
怖いとか心細いなんて感覚とは一生無縁でいられるとヒカルは思った。
「・・・加賀、また背が伸びた?」
話しかけられてこちらを見下ろすその目線が、記憶よりも随分高い所にある。
加賀は背丈を測るように自分の頭頂部に手をかざした。
「そうかァ?自分じゃ分かんねーけど」
「伸びたぜ。もうほとんど大人の人と変わらねェくらいだ」
羨望を込めてヒカルは言った。元々ヒカルや三谷より年上ということもあり
親友四人組の中では飛び抜けて背が高かったが、
しばらく疎遠になっていた間にまた一段と大きくなったように見える。
まだ肉はあまり付いていないもののがっしりと頑丈そうな肩部の骨組み、
男らしく飛び出た喉仏、どれを取って見ても大人の男へと脱皮しつつある青年の
健全な逞しさを感じさせた。

「ま、オマエとこんな風にゆっくり話すのも久しぶりだからな。
しばらく見てなかった奴が言うなら伸びてるんだろう」
加賀は拘らずにそう言うと身を屈めて道端の草を毟り、口に咥えて草笛を吹き出した。
口笛ほどにはうまくいかず、間が抜けたような哀切なような独特の音が二人の道に響く。
その音を聞きながら黙って歩くうちに、ヒカルの口からぽつりと言葉が零れ出た。
「筒井さんの病気・・・、加賀は知ってたんだ」
草笛の音が止み、「ああ」と返事が返ってくる。
「オマエや三谷に隠してた訳じゃなかったんだ。オレが知ったのもたまたまで・・・
前にオレが学校の終わった後、伯父さん夫婦の家に出かけたことがあってよ。
その時、隣町の大きな病院に入ってく筒井を偶然見かけてさ。
ただの風邪にしちゃ大袈裟だと思ったから学校で会った時に問い詰めた。それで・・・」
「そっか・・・」
そう言えばあかりや筒井が、加賀は最近伯父夫婦とよく行き来しているようだと
以前話していた。筒井が隣町の病院に行ったというのは、もしかすると
自分が母と喧嘩して家を飛び出し、筒井の家に泊めてもらったあの日のことだろうか。
あの日はアキラと金平糖を食べて、美しい星空の下を幸福な気持ちで帰ったのに。


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