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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

296断点・4 (6) </b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2004/03/14(日) 03:24
塔矢は止めていた手をまた動かし始め、無表情に白石と黒石をより分け、片付けていく。
だからオレも盤面に取り残された黒石を集める。
石をより分ける指先が触れても、塔矢は何の反応もしない。
冷たい、機械のような手の動き。うつむいた顔からは表情が見えない。
石をしまい終わって碁笥の蓋を閉めて、俯いたままオレの顔を見ないで立ち上がろうとした塔矢を
制するように、後ろから声がかかった。
「はい、お茶どうぞ。」
ぴくっと塔矢の肩が強張る。

「アキラくん、進藤くんと喧嘩したんですって?ちゃんと仲直りしないとダメよ。」
はっと塔矢が市河さんを見上げ、その瞬間、塔矢の仮面がはがれた。
塔矢は一瞬泣き出しそうな顔で市河さんを見た後、唇を噛んで目を逸らせ、顔をそむける。
そんな塔矢に、市河さんがまた優しく声をかける。
「私ね、知ってるわ。アキラくんにとって進藤くんがどんなに大切な人だか。
だから喧嘩したままなんて駄目。ちゃんと仲直りして。」
「……」
「私はもう帰るから、ちゃんと二人で話をして。進藤くんの話を聞いてあげて。
アキラくんが怒ってるなら、何をどうしてどんなふうに怒ってるのか、ちゃんと進藤くんに伝えてあげて。」
そして、ちゃらん、と音を立てて、カギのついたキーホルダーを塔矢の手元に置いた。
対局に夢中になってて気がつかなかったけど、見回すともう碁会所にはオレたち以外、誰もいない。
「戸締りの仕方、わかってるでしょう?」
かたくなに俯いたままの塔矢の肩に、そっと、勇気付けるように触れて、それからオレに笑いかけて、
それからふっと目を伏せて、オレ達が座っている席に背を向けた。
コツコツと市河さんの靴の音が静かな部屋に響く。
それから何かを片付けているような音。
そしてまた足音がして、それから自動ドアの開く音がして、市河さんが帰っていってオレ達二人だけが、
碁会所に取り残された。


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