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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

291裏失楽園:2004/02/29(日) 21:12
 幼いころには、とてつもなく強くて、いつもボクを導いてくれて、毅然としていて――そんな
風にしか思えなかった緒方さんだった。あのころには見えなかった彼の弱さというものを実感する
ことができるようになったのは、やはりボクがそれなりに成長したからなのではないかと思うのだ。
「ねむ…」
 大きなソファの上で胡坐をかいていた進藤が、反動を付けてごろりと転がった。ボクのほうへ。
 ボクの背と背もたれの間にすっぽりと頭を入れて、いかにも眠そうなくぐもった声で『なぁなぁ』と
話しかけてくる。
「緒方先生も素直じゃないよな。何がそんな生ぬるい感情じゃないだか…なぁ」
 ボクがシャワーを浴びていたときの話をしているのだろうか。進藤は独り言のように、だが明らか
にボクにも聞こえるように呟いた。
「塔矢、知ってるか?」
 何を? と問い返す間もなかった。転がったのと同じような勢いでガバリと起き上がると、進藤は
1つ大きな欠伸をしてニヤリと笑った。
「愛人の意味を間違えて覚えているオレとオマエは、本当にバカなんだってよ」
「愛人? …の意味って」
 愛人は愛人でしかないだろう。こそこそと他人の目を気にしながら会って、決して人に祝福など
されない、いつも後ろめたいなにかが付きまとう関係。
 視界の隅で緒方さんが深いため息を吐き、観念したように天を見上げたのが見えた。


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