したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

250月の船(8) </b><font color=#FF0000>(.QypifAg)</font><b>:2003/11/03(月) 20:50
定信は明の顔を、明の母である蘇芳に重ねて思い出していた。
──蘇芳と同じ歳に近づくにつれ、よりいっそう蘇芳の面影が出てきた。
・・・・・・・・あれは十数年前の春の頃であったか。

定信がある大名の桜の宴に招かれた時の事。
酒に酔って釣殿から席を外し、庭園の端へ休む定信に対して前方の渡殿に、
人の姿が現れた。
よくよく見ると、それは赤と白の重ねの唐衣裳装束を身に付けた一人の
女で、桜の花が咲きほこる中、桧扇を片手に持ち優雅に舞っていた。
艶やかで柔らかな黒髪がさらさらと風になびき、豊かな黒海がそこに
広がる。
御簾のわずかな隙間に入り込んだ花びらに心を奪われ、桜に導かれるよう
に人気のない渡殿に忍んだのであろうか。
桜の花が美しくて、いてもたってもいられず嬉しさを舞で現したような
風情であった。
その様子は、まるで絵巻物に描かれてある天衣・瓔珞をつけた天女の舞の
如く。

天女と見違えるほどの美しい手弱女こそが明の母・蘇芳だった。
天は時に人界の領域を越える者を、地に産み落とすことがある。
明の母である蘇芳はそのごく稀な人種の一人であった。
だが人の域を超える並外れた才能や美が、その人物に幸をもたらすとは
限らない。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板