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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

222裏失楽園:2003/09/12(金) 21:38
 進藤ヒカルという棋士のことを誰よりも理解しているのはボクだ。
 しかし、進藤と言葉を交わし、また何度となく対局してその結果得られた彼の人となりを
まだ完全には把握しきれていないのだろう。
 彼は確かに繊細だが、ボクが思っていたよりもはるかに進藤の精神は強靭だった。
「長く出てこないから、倒れてるんじゃないかと心配してたんだぞ」
 進藤の声にかぶるように、緒方さんが『アキラくん』とボクを呼んだ。いつもの冷徹な
響きをもつ彼の冷たく低い声は、その胸中が穏やかなのかそうでないのかすらもボクに悟
らせてくれない。
 彼の瞳から真意を探ろうとしたが、眼鏡のレンズに阻まれてそれも叶わなかった。
 立ち上がった緒方さんは溜息とともに近づいてくる。そしてボクの髪に指を絡ませた。
「髪がまだ濡れてる。早くここに来て髪を拭きなさい。……私がいるから入ってこられない
のなら、私が出て行くが」
「緒方センセ、何かっこつけて”私”とか言ってんの?」
 進藤は笑っていたが、ボクにとっては笑い事ではなかった。足が竦んで動けない。
 緒方さんが自分を『オレ』ではなく『私』と称すこと。
 ――それは相手にある程度の距離を置いたということを指していた。


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