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魔境避難所

561</b><font color=#FF0000>(A8qNt5N2)</font><b>:2002/11/19(火) 04:24
「何するんだよっ!」
ギリギリと歯軋りの音が聞こえそうな程強く歯を噛み締めている彼の手は、同じく力が
篭り過ぎて真っ白になっていた。
すまない、どうかしていたと謝ると、彼は一瞬拍子抜けしたように、へっと短い息を吐
いてから、盛大に肩を竦めて冗談にしてもタチが悪すぎるぜ、と言った。
ムスッとした表情は崩さないものの、これ以上ついさっきの『些末な悪戯』にこだわる
気も無いようだ。
その時、同時に全身から緊張が解けたのが分かった。
あからさまに安堵しているその様が、余りに純粋で穢れなく見えて、そう感じれば感じ
る程、貶めた時にどんな表情を浮かべるのか、己の中で期待は高まるばかりだ。
たまにはこんな趣向も悪くない。
北斗杯開催まではまだ少し日がある。
四六時中監視が入る訳ではないから、隙もあるだろう。
ここで襲ってしまうのも一つの手だったが、過剰な反応を返した彼が可愛かったから、
もう少し弄んでみたい気分が強かった。
「あ、ここかな? これでいいんだよなっ?」
目の前でもうさっきの事は忘れたように相好を崩す彼を見つめ、多分、と頷き返す。
彼の頭には、もう目の前の事しか映っていない。
その姿が微笑ましく、そしてまた、心の中のどす黒い部分をいやに掻き立てる。
これからの三日間が楽しみになって来たな。
──そんな事を思いながら、塔矢家の門をくぐった。


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