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魔境避難所

1666泥中の蓮・番外─強奪─ ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 10:21:21
【2016/08/24 ネット速報記事】
・碁聖戦 進藤七冠誕生!史上初・七大タイトル全制覇
 塔矢、碁聖を失い五年ぶり無冠に 不戦敗での失冠を除けば十年ぶり

【2016/08/25 某新聞スポーツ・芸能欄 囲碁コラム】
『塔矢・進藤、片方がいなければ、もっと早く達成できていただろう。あるいは、このふたりの時代
が終わらなければ誕生しないだろう。そう囁かれてきた記録がついに生まれた。
「ギリギリ二十代、目標だったので間に合ってよかった」と、進藤七冠は笑顔で語った。来月二十日
で三十歳。
この六月に本因坊戦十連覇を決め、二十七世本因坊佐為と公に名乗ることを早くも許された。
本来なら引退するか、現役で六十歳を待たねば、条件となる五連覇または通算在位十回を満たしても
本因坊の永世称号は名乗れない。
十連覇の偉業を讃え、年齢前倒しの特例が六十歳未満の現役棋士に適用されたのは史上二人目。もち
ろん、最年少記録大幅更新だ。
だが、彼自身は“佐為”と号を決めただけで名乗りはせず、相変わらず各棋戦に本名でエントリーし
ている。
「一生、機会はないでしょうね。あれを私が名乗るなど、おこがましいにも程がある」
そう謙遜するほど強すぎる思い入れを持つ号。今回の七冠達成でもまだ合格点には遠いらしい。次の
名人戦でも本名、進藤ヒカルとして挑戦者を待ち受ける。相手はもう何年も同じ、塔矢アキラ九段。
またも上座と下座が逆転しての同一カードである。繰り返されてきたライバル対決のループは絶たれ
る予兆すら見せない。
一方の塔矢九段は、既に先を見据えている。
「彼が持っている七冠、名人から順に剥ぎ取っていきますよ。進藤さんにできて、私にできない道理
はありませんから」
無冠になったばかりなのに、来年の今頃は自分が七冠だという強気の宣言だ。
実力は全盛期の父を超えたと称されて久しいが、父と同じ最大五冠に甘んじている。グランドスラム
も、不倶戴天の敵・進藤による執念の本因坊防衛で阻まれ続けている。本因坊だけがどうしても獲れ
ずだ。
だが、前に出る気概は微塵も揺るがない。
実力伯仲の両棋士にあって、七冠を維持できるか、無冠を返上するかは紙一重。
名人戦は九月に入ってすぐ始まる。要注目の七番勝負である』


「やれやれ。今年の誕生日は沼津の超高級老舗ホテルでおまえとべったり、かぁ」
ヒカルはうんざりした顔で突っ立ったまま、向かいに座って囲碁雑誌を読むアキラを見下ろした。
字面にすれば優雅にリゾート地でくつろぐような感じなのだが。いや、リゾート地、だけは合ってい
る。しかも、泊まるホテルは一部の建物が国の有形文化財にも登録されている名門。
それがゆえに、詐欺っぽさは倍増だ。
「キミの誕生日前後は毎年、名人戦でボクと三泊四日の観光地めぐりだ。不満なのか」
自宅のリビング、完全オフの午後。明日にはアキラ共々、前乗りで対局場のある地方へ向かわねばな
らない。その目的地が沼津の高級ホテル、というわけだ。
向かう場所は同じでも、ふたり揃って、とはいかない。時間差にせねばならないのが、いつもながら
手間である。
ヒカルは相変わらずホテルや旅館が苦手なので、仕事以外で利用した経験はほんの子供の頃だけ。
祖父母・両親との旅行や小学校の行事に限られる。
タイトル戦の全対局を棋院会館・幽玄の間でとは云わないから、せめて家から通える範囲にしてくれ
ればいいのに──と、ここまで考えて。
ふと、いらない事まで思い出す。
(……そういや、ラブホもホテルか)
例の、隠遁生活を終えて以降。そっちのホテルにも全く行っていない。一時的な需要だった。
行く必要が無くなったのだ。今の自宅を含め、情報の漏れない安全なヤリ部屋は幾つか確保している。
「……二連敗で第三局の初日がぴったり誕生日なんて、超絶気分よろしくない」
「ハハ、短い七冠だったね。最短記録かな?」
「最短もなにも、七冠は歴史上オレっきゃいねェ。イヤでも今のオレがものさしだ」
「名人戦、ボクがストレートで勝てば。一ヶ月半足らずの天下になるのかな」
ニヤニヤしているアキラの顔面に、真正面から蹴りをブチ込みたくなる。
「気が早ェ」


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