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魔境避難所

1087邂逅</b><font color=#FF0000>(TfjwVpA2)</font><b>:2003/09/07(日) 01:35
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 ヒカルは少し考えていたが、結局緒方に付いてきた。「食事を奢る」の一言が効いたのかもしれない。
 彼が緊張しなくてもすむように、気安いイタリア料理の店に入った。ヒカルはパスタを
うまく扱えないらしく苦労して口に運んでいた。
「もう!ラーメンだったらよかったのに…!」
ブツブツと言いながら、スパゲッティをフォークに絡めていく。
 その幼い仕草に自然と笑みが零れた。天衣無縫なヒカルの性格を無礼だと怒る者もいるが、
緒方はその無邪気さを気に入っていた。礼儀も言葉遣いもまるでなってはいないが、
それは許容できる範囲のものだ。むしろそこが気に入っていると言っても良い。自分も
お世辞にも品行方正とは言えない身だ。
「あーもう…!」
イライラとフォークを操るヒカルの口元に、ソースが付いている。
 舐めとりたい。人目がなければ、やっていたかもしれない。もし、本当にそれをしたら、
ヒカルはどうするだろう。真っ赤になって黙り込むか…それとも、泣いて怒るだろうか。
 緒方は、からかいたい誘惑を必死に堪えた。口の中で笑いを噛み殺すのが難しい。ヒカルは、
そんな緒方をキョトンと見ていたが、「あっ」と、小さく声を上げた。
「ん?どうした?」
緒方の問いには答えず、ヒカルはひたすらスパゲティを口に運ぶ。
「ごちそうさま…」
紙ナプキンで口を軽く拭い、水を飲んでホッと一息溜息を吐いた。
 ヒカルはモジモジと身体を揺らし、何度も口をパクパクさせる。何か言いたいことでもあるのだろうか。
緒方はヒカルが話すのを待った。やがて躊躇いがちに怖ず怖ずと、彼が口を開いた。

 「あのさぁ 緒方先生さぁ。恋人いる?」


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