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魔境避難所

1072懐沙の賦:2003/08/31(日) 23:05
久しぶりに笑ったような気がする。そう思いついて明は目を閉じた。
床の温度と光の息遣いに意識を集中する。ひどく安らかな気分を思い出した。
まるであの頃のように。自分が一番幸せだった時。光と、佐為と、一緒だった時。
と、額に触れられて明は目を開いた。光が笑いながら指で明の眉間をなぞっている。
「眉間にシワよってる…跡になっちまうぞ」
からかうような、心配してくれているような光の口調に、明はムッとして更に眉を寄せた。
「また考えすぎてるんだろ?ばっかだなあ。お前の悪い癖」
「キミに、分かるもんか」
分かるはずが無い。何も変わらない光。自分はこんなに疲れているのに。
こんなに追い詰められているのに。こんなに、昔の幸福を思い出して、悲しいのに。
光は笑いを収めると、指を明の眉間から頬に滑らせた。
髪を梳かれるように何度も頬を往復する指が心地良い。
「お前、苦しいの?」
真剣な光の言葉が胸に響いてくる。理解してもらえるのだろうか?
泣き喚いて、現状の不満と愚痴を全て吐き出してしまいたくなる。
その衝動をやっとの事で抑えて、明は「うん」とだけ言った。

「正直なヤツだな、お前って。辛かったら、泣いてもいいし、怒ってもいいんだぜ」
「…もっと辛くて苦しくなって、どうにもならなくなったら、そうする」
「我慢するのか?」
「うん。まだ大丈夫、我慢できる」
そう言うと、頬を撫でていた指で思いきり鼻をつままれた。
「やっぱりバカだな、お前!オレの前でまで我慢する必要なんてないのに、意地っ張り!」
「ばっ…」
鼻をつまんでいる光の手を掴んで引っ張る。
引き倒すようにその体を組み敷くと、光はびっくりして目をまるくした。
「キミにだけはバカって言われたくないっ!意地を張らないと内裏じゃやっていけないんだ!
 キミに分かるもんか!何も知らな癖に…分かるもんかっ!」
大声で喚くように反論すると、ほんの少しだけ気分が晴れた。


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