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魔境避難所
1071
:
懐沙の賦
:2003/08/31(日) 22:09
かつて佐為が開いていた碁会所だったその屋敷。
室内を支配するのは、穏やかに置かれる黒石の音と乱暴に打ち付ける白石の音、
そして外から聞こえてくる雷鳴と一層激しさを増した雨脚の響きだけだった。
パチリ、パチッ…パチリ…パチッ…
明にとっては息が詰るような時間だった。苛立ちを碁盤にぶつけても、光にかわされてしまう。
焦って思うように石を繋げられない。思い通りにいかない盤面は今の明のようだった。
勝負がついた。
「…足りない、六目か」
「ありがとうございました」
感情のままに打った白石は酷い有り様だった。明は恥じるように手早く石を片付け始める。
「強くなったね、近衛」
悔し紛れにそう言うと、光はおどけたように笑って見せた。
「へへっ、何たってオレは佐為の一番弟子だし。たまにここで秘密の特訓してたんだ」
どおりで空き家の碁会所が荒れ果てもせず整えられていたわけだ。
床や碁盤が埃を被っていないのも、光が時々来て掃除をしているのだろう。
「でも、今日のお前ちょっとおかしいぜ。そんなに力みすぎんなよ」
言われて初めて、明は自分が随分緊張していたのだと自覚した。
「今度はもっと肩の力を抜いて打とうぜ。楽しくないだろ?」
「ああ…」
深呼吸すると、少し落ちついた。盤面に意識を集中すると、心が軽くなっていくようだった。
一体どれくらいそうしていたのだろう。雨は降り続いていたが、夜もすっかり更けてしまった。
二人は勝ったり負けたりしながら何度も何度も対局した。
疲労に頭が少しづつぼーっとしてくる。すると、光が「負けました」と頭を下げた。
「あーもうっ」と喚きながらごろりと床に寝転がった光は、明を見上げて「休憩ー」と言って来た。
明も真似をして横になる。二人顔を見合わせてくすくすと笑った。
床の冷たさが、頬に気持ちよく伝わってきた。
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