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プチ避難所
482
:
裏失楽園
:2003/06/02(月) 21:47
バスタブに片足を乗せ屈みこんで、ボクは右手の人差し指を自分の身体の内部に深く差し
込んだ。自分でも判るほど熱を持った入り口は事務的に爪先を少し上下させるだけで指を
飲み込み、掻き回すとその容易さに呆気にとられる間もなくトロリとしたものが下る。
彼が放ったものがどのくらいの量なのかは判らないが、念のためにとシャワーヘッドを
取り指で拓いた下腹部に湯を注いだ。ピクピクと口が開くたびにぬるい湯が入り込み、ややも
せずお腹が下から満たされるような奇妙な感覚が生まれる。それを目を閉じてやり過ごし、
衝動に任せて身体の力を抜いた。足元まで伝う生ぬるいものが何なのか――どうやって、
どんなシチュエーションでボクの体内にそれが入ったのか、そのときに同じマンションに誰が
いたのか――考えるだけで足が震える。
その時、不意に視線を感じたような気がしてボクは顔を上げた。
その視線の主は、恐らくバスルームの壁を半分埋め尽くす鏡からのものだった。
白と金を基調としたバスルームの中でも一際異彩を放つ、悪趣味なほど大きな鏡は以前から
あるものだったが、緒方さんはこれを殊更気に入っていた。
ボクを後ろから抱きすくめながら、あるいはボクの両手をその鏡に縋りつかせながら、彼は
ボクをゆっくりと苛んだ。そしてボクはいつも…生身の緒方さんと鏡の中の緒方さんに抱かれて
いるような、そんな感覚に酩酊した。バスルームに反響する声を抑えるどころか愉しんでいた。
ボクがここに入ったときは進藤の名残で曇っていたが、ボクが浴びたシャワーの飛沫が曇りを
なくしている。ボクが動くたびに鏡に映るボクも同じように動き、それが目の端に映っていたの
だろう。今も、はしたない格好のボクを映している。
一人でシャワーを浴び、後始末をしただけで興奮しはじめているボクを。
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