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プチ避難所

1330CC ◆RA.QypifAg:2014/06/28(土) 17:29:17
盤上の月4〜最終章〜(5)



ヒカルは念願かなって本因坊タイトル保持者となり、世間ではヒカルの実力を認め、ヒカルも少し肩の荷が
下りる。国内だけでなく国際的にもアキラとヒカルの名は轟き、衰弱を辿っていた日本の囲碁は注目を浴び、
国内での囲碁復旧はゆるやかではあるが少しづつ進んでいた。誰が見てもアキラとヒカルの実力は明らかで
あり、抜きん出ていた。

ある晩、アキラは夢を見た。
―――――一羽の鳥は長い長い旅をしていた。途中で嵐に遭ったり、飢餓が訪れたりと、それはとても苦しい旅
だった。けれどもその鳥は自分の居心地の良い場所は他の地ではなくて、自分が昔住んでいた豊かな大地に
ある大木だと悟る。懐かしい緑木へと一羽の鳥は舞い戻って枝に止まる。慣れ親しんできた緑木へと愛しげに体を寄せて安息を求め、翼を閉じて羽を休める。
大木の緑木も鳥が戻ってきたことを喜び、体全体を歓喜で振るわせる。
木々の葉が擦れ合い、サワサワと優しい葉音を醸し出す。鳥はその音を子守唄のように目を細めて静かに聴いていた。そして優しく温かい眠り
に落ちていった。

アキラが眼が覚めた時はすでに朝になっていた。あまり夢を見ないアキラだが、今日の夢はとても鮮やかに
覚えている。何かを暗示するような夢だとアキラは感じた。必要な物以外ほとんど何も無い殺風景な空間の
部屋。アキラは現在実家を出て、マンションで1人暮らしをしている。ヒカルと別れてからの実家での生活
は、家の所々でヒカルとの思い出が鮮烈にそのつど蘇り、アキラを苦しめた。夜景が綺麗な高層マンション
に住み、そこで静かに過ごすことをアキラは望んだ。ベッドから身を起こし、カーテンを開く。眩しい朝陽
がアキラの眼に飛び込んできた。季節は12月の下旬に入り、寒気が冬独特の浅黄色の澄んだ空を作る。


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