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プチ避難所

1320CC ◆RA.QypifAg:2014/06/28(土) 17:05:28
盤上の月3(8)

盤上の月・3(ラストの部分)



「――――――――――!!」

声にならない叫びながら涙が一気に溢れて、アキラの頬を流れては落ちていく。そして碁盤を何度も両拳で
激しく叩きつけた。手が赤く腫れ上がってきても、アキラは碁盤を叩くことを止めない。

──これはただの木だっ!

そう思いながらアキラは碁盤を両手で持ち上げて、勢いよく床へ投げつけた。その拍子に碁足が一本外れ、床にこ
ろころと音を立てながら隅へ転がる。肩で息をするアキラの目に、床に散乱としている黒白の碁石が映る。

──これはただの石だっ!

アキラは床に転がる黒白の碁石を握って、壁や床へ何度も投げつけた。自分のやるせない気持ちを碁石に当たるか
のように、何度も、何度も、碁石を両手でつかんで投げ捨てるように床などにぶつけた。黒髪は乱れ、眼からは止
め処もなく涙が溢れては零れる。なぜこんなただの木や石のために、ヒカルへの想いを封じなければならない
のか。いったい自分は何に縛られているのか。今のアキラに分かることはただ一つ。自分は碁の魔性に魅入
られており、一生のその路から逃れられないということ。その路を歩き貫くならば、あらゆることを犠牲に
してでも進むだろう。

アキラは生まれて初めて碁を心底から憎いと思った。憎くて憎くて仕方がない。だが愛しくて大切で捨てら
れない。碁の無い人生など考えられない。碁の無い人生はアキラにとって死を意味する。憎悪と愛の似てい
るようで似つかない相反する感情が、アキラの心に激しく交差する。

アキラは考えた。
愛する碁を
好きなヒカルを
どうすれば両方を大事にして生きていけるかを。


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