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倉庫の修正・要望はここで

172>゚))))彡</b><font color=#FF0000>(Enraiwuw)</font><b>:2002/09/24(火) 10:57
倉庫番さん、いつもお世話になってます。
傘の修正をお願いします。

1は下記のものと差し替えてください。

(1)
―――――水色の傘を選んだのは、大切な思い出があるからだ。

雨の匂いに気づいたのは、検討を始めた頃だった。
対局室の中は、いやな湿気と埃混じりの生臭い匂いが幽かに充満していた。
雨そのものには、水分特有の甘い匂いがあるけれど、室内にこもっているときは余り気持ちのいいものではない。
今朝、家を出るとき、快晴とまでは言わないけれど、雨の気配は感じられなかった。
いつ降りだしたのだろう。
そんなことを考えながら、碁笥に石を戻す。
「ありがとうございました」と挨拶を交わし、僕は出版部に顔を出すため、対局室を後にした。
外部から依頼されたインタビュー原稿のゲラチェックがあったのだ。

「失礼します」と、声を掛けると、去年の秋の人事異動で、出版部全体を統括する立場になった天野さんが「待ってたよ」と笑顔で迎えてくれた。
「今日は?」大き目の封筒と赤いボールペンを手に、天野さんが尋ねてくる。
「おかげさまで勝ちました」
「いや……」くっくっと天野さんが喉の奥で笑った。
「僕はなにもしてないんだけどね。でも、随分時間がかかったんじゃない? 相手は?」
「白川先生です」
「そりゃ、時間がかかって当たり前か……、えっと、こっちの会議室でいいかな」
僕は会議室へと案内してくれる天野さんの背中に、聞こえないようにため息を零した。
穏やかな雰囲気のせいで誤解されがちだが、白川先生は強い。
基本に忠実で堅く攻めてくるパランスの良いタイプだ。意外性には乏しいが、攻守ともに優れているから、気を抜くといつのまにか負けている。そんな相手だ。
その上、最近の白川先生は、変容の時期にあるようで、序盤に良い形がてきると、面白い手を見せる。
棋譜を整理しているとき、それに気づき僕はかなり興味を持った。
そして、気がついたのだ。白川先生が、進藤の兄弟子であることに。
前に、少し聞いたことがある。進藤が白川先生の囲碁教室にやってきたときの話を。
本当にずぶの素人で、五つのルールさえ知らない進藤に、石取りゲームを教えたそうだ。
それがいつ頃のことだったか尋ねたら、どうやら僕と初めて対局した前後らしい。
今更のように、そんな彼に負けたのかと、僕は落ち込んでしまった。


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