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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

96麻生 結弦 ◆GM.MgBPyvE:2020/02/27(木) 06:26:42

「――なっ……」

魁人何か言いかけて、でもすぐに口を噤んだ。
さっき自分で「黙ってる」って約束した事を思い出したんだろう。

菅さんは……すぐには返事を寄越さない。
おそらく言葉の意味を頭の中で整理しているんだろう。
心臓を撃ち抜かれたヴァンパイアの肉体が完全に消滅するには10分ほどかかる。
局長が倒れてから少なくとも2、3分は経過している。あと7、8分持つかどうか。
つまり局長と言葉を交わすチャンスは今この時しか無い。
ほんとうは早く片を付けて、一刻も早く彼と――なんて考えている筈だ。話す時間すら惜しいと。

だからだろう。
菅さんは、何故そんな提案をするのだとか、どうして5分だけなのか、なんてまどろっこしい事は一先訊かなかった。
ただ一言。

「見返りは?」

その言葉には隠しようのない焦りの色。
だから僕も即座に答えた。

「仕切り直しです。魁人にリロードの許可を」
「いいよ、それで」

即断だった。
もちろん、決断が早かったからと言って、菅さんが浅はかって訳じゃないだろう。
現に菅さんの声には「すべて承知の上で了承した」って感じの重みがあった。
そう。
この交渉が成立するには、少なくとも2つの問題を解決する必要があるんです。
ひとつは覚醒の手段。
核(コア)である心臓を破壊された個体は例外なく滅びへと向かう。
それを一時とは言え、無理矢理に起こそうと思ったら、びっくりするくらいの量の生き血が必要なんです。
もうひとつは自我の奪回。
どんなにその意志や精神が強靭でも、自我を保ったまま覚醒する個体は居ない。
ひとたび目覚めれば、眼に映るすべてを敵とみなす悪鬼となる。主(あるじ)である伯爵も例外じゃない。
その自我を如何にして取り戻すか。

生き血については問題ありません。
「僕」が持ち掛けた提案ですからね、とうぜん僕が調達するべき「資材」です。
まあ……今の僕はこの体たらくですから? 
むしろ役に立ててほんと良かった。
そんな僕の「好意」を菅さんは受け取った。だから僕の提案を呑んだ。
自我については……考えがあるんでしょう。僕の知らない局長を知っている菅さんだから。
でも魁人は気に入らなかったらしい。

「ふざけんな!!!」

ビリビリっと震える天井のステンドグラス。
……やっぱりね、反対すると思ったよ。
ほんと勝手ですよ。
いつもそうだ。自分の事は簡単に諦めるくせに、いざ仲間が死ぬとなると尻込みするんです。


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