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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

93如月 魁人 ◆GM.MgBPyvE:2020/02/15(土) 15:34:13
カチリと鳴るこの音ぁ……結弦が撃鉄起こした音だ。
俺ぁ眼ぇつぶってその瞬間(とき)を待った。しばらく待って……そんでもってまた待って……結弦? 何してる? 

「彼はいま『見えてない』んだよ? いったいどうやって撃てって言うのさ」

伯爵の言葉に俺ぁ閉じていた眼を開けた。
奴も閉じてた眼をうっすら開けたところだ。その瞳孔は黒くねぇ。白く濁った眼ん玉が、俺とこいつを映してるだけだ。
へ? おま……マジで見えてなかったの? てっきりさっきのはブラフかと思ったぜ。が、大したコトじゃねぇ。こいつは「結弦」だからな。

「問題ねぇよ、奴ぁ撃てる。眼が無くても耳がある。自慢の耳がよ?」
「……」
「俺とお前の距離は5m。この声で……胸の位置は解るな?」

結弦の眉がぐっと寄った。右の手が微かに震えてんのは……不安からか?
流石のお前も、見えねぇ眼で当てるんは難しいか? なら――

「も少し右、そうだ、それでいい。パラベラムとは威力が違ぇから反動に気ぃつけな。なぁに、多少のズレはその威力がカバーするさ」
「威力……」
「あ?」
「そうだ、その威力だよ! だから麻生は撃たない。撃てないんじゃなくて、撃たないのさ!」
「黙ってろ! なに訳わかんねぇコト抜かしてやがる!」

俺ぁいきなり口出してきやがった伯爵に思いっきり蹴り入れてやった。
腰のど真ん中、人間なら一発で参っちまう急所のひとつにな。
が大人しくなったのも一瞬間だけ……やっぱヴァンプの親玉だ。

「マグナム弾の威力は……君が良く知ってるだろ? 当たればわたしだけじゃない、君だって――」
「黙れっつってんだろ!」

俺ぁ奴の頭の毛掴んで、これでもかってくれぇ床にぶち当てた。
何度もだ。容赦なんかしねぇ、血が結構飛び散ったが……構やしねぇ、ヴァンプがこの程度で参るもんかよ。
そのうちにぐったりした奴の身体を起こして見りゃあ……奴め、まだニヤっと笑ってやがる。
俺は奴の首に腕を回した。柔道の締め技だ。
これは流石に苦しかったか、声にならねぇ声を上げた伯爵の身体が固まった。
したらチャリンと音がして、後ろ手になった左手から何かが落ちた。
見りゃ、さっき司令が落としたロザリオだ。なんでこいつがこんなもん持ってやがんだ?
俺ぁもう一度結弦に眼ぇ向けた。
そして眼ぇ疑ったぜ……。
奴の親指が撃鉄に触れ……カチリと戻った。コッキングする「前」の状態にだ。

「なんでだ結弦! なんで撃たねぇ!? 伯爵殺れる最後のチャンスだろうがよ!!」

誰も、何も言わねぇ、答えねぇ。白い雪だけが、床の模様を埋めていく。
その沈黙を破ったのは、落ちてるロザリオに眼を落としていた伯爵だ。

「解ったろ。麻生が撃たないのは、君を殺したくないからさ」
「バカ言え……ハンターってもんは何よりも使命を優先するもんだ。自分(てめぇ)と仲間の命、両方背負い込んでんだよ」
「魁人こそ……」
「あ?」
「魁人こそ、サーヴァントになりかけた僕を助けに来てくれたよね。命令違反までして」

俺ぁ押し黙った。そんな事もあったかも知れねぇ。だがありゃあ……

「そりゃあれだ。後々結弦が居た方が作戦的にも有利だからだ。感情に流されたわけじゃねぇよ」
「僕もさ。これは感情に流された選択じゃない。作戦さ。提案があるんですが、聞いてくれますか? 伯爵殿?」

俺らに銃口向けたまま、ゆっくり立ち上がる結弦。
……提案て……お前いったい……なに考えてやがる?


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