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【バンパイアを殲滅せよ】資料庫

90菅 公隆「サNp3_S:2020/02/08(土) 06:41:07
わたしは眉間に突き付けられた銃口をまっすぐに見返しながら、半年前に眼を通した報告書の一部を諳んじた。

「麻生結弦、負傷がもとで右眼の視力を失う。左眼も長時間の酷使による失明の恐れあり、だったっけ」

銃を降ろさず、視線を外さない麻生。
5mほど離れた横合いからこちらを狙っている如月が声を漏らす。奴もそれには気づかなかったのか。

「でもさ、ほんとうの問題は……何故君がその銃でさっさとわたしを撃たないのかってことだね」

そうさ、銃口とわたしとの間合いはたったの10cm。
近すぎて手刀の威力が十分に発揮出来ない距離だ。
撃てば確実にこのわたしを不動化できるってのに、それをしない。
その心は?

「君はこう考えたんじゃないのか? この距離で銃を向ければ、わたしは銃を奪おうとするだろう、
 手刀の使えないその瞬間が、如月が撃ち込むチャンスだってね」

如月の軽い舌打ちが聴こえた。……わたしの読みが当たってたって事だ。
麻生が引き金を引く指をグッと動かす。しかし撃ちはしない。撃たないんじゃない、撃てないのさ。 

「でもさ、その銃(ベレッタ)……弾切れだろ? わたしだってちゃんと数えてる。見くびらないで欲しいね」

麻生が息を呑む。腕は降ろさない。
わたしは麻生を正面にしたまま、視線だけを如月に向けた。
いくら如月でも、横向きの相手の急所を正確に撃ち抜く事は難しいだろう。わたしが左腕を上げない限りは。

「しかもなにさ? こんなとこに大事な銃(コルト)を置いたままでさ」

今度は如月が息を呑んだ。
右で狙いをつけたまま、左手を腰のホルスターに当て……見るからに「しまった」という顔をした。
どこからか吹き込んだ粉雪交じりの風が、彼のキャップのツバと髪の毛を揺らしている。
相変わらずポーカーの出来ない奴。

「じゃあさ、予想してみる? 君の残り弾は2発。つまりそことここに1発ずつ。それを踏まえたわたしがどうするか」


眉間に皺をよせ、しばらく口を結んでいた如月が……不敵にもニヤリと笑い口を開いた。


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